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2024/3/13★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~ウソ~

 

防衛大学校長等を務めた五百籏頭眞氏の訃報が3月6日届きました。

私は直接ご面識があったわけではありませんが、丁度ご子息の五百籏頭薫先生(東京大学)の本を読んでいる時の訃報でした。

お二人とも、私の中高の先輩にあたり、同窓会の幹事をしたことをきっかけに書き物等に目を通させて頂いていたところでした。

ご冥福をお祈りします。

 

私が今読んでいる本の一つに「<嘘>の政治史」(中公選書 五百旗頭薫 著)があります。

東大を訪れる機会があり、五百旗頭先生にご挨拶する許可を得られたので、せめてお書き物の一冊くらいは読んでいかないと、と読み始めた本です。

これがとても面白い内容で、今日はその一部を紹介したいと思います。

 

五百旗頭先生は歴史学の観点から政治と<嘘>について分析をしています。

政治に<嘘>がつきものであるという認識に立って、嘘の発言、嘘への対処という切り口から社会の在り様をとらえています。

特に見る人が見れば嘘であり、指摘する声があっても嘘を語る政治家に権勢があったり支持する人が多かったりするために公にまかり通ってしまう、

「横着な嘘」については批判的な態度をとっています。

 

=======

…これはいけない。まず、まじめに議論する気が失せてしまう。

それに、騙されたり、騙されたふりをしている人々を見ると、つくづくこんな国に住みたくないと思ってしまうかもしれない。

シニシズムを増長させるのは、こういう嘘である。 …(38ページ)

=======

 

人が集まるところには政治があります。

歴史のある大企業や官公庁では特にそうでしょう。

「横着な嘘」の問題は、政治や社会といった大きな問題に留まらず、私たちが身を置く日常の職場にも及んできます。

 

プライバシーやAIへの対応は「ガバナンス」を通じてコントロールします。

「ガバナンス」とは、目的を達成するための仕組みやルールの整備を指すので、人が深く関わります。

社内政治やセクショナリズムとの衝突もしばしば生じるでしょう。

そんな時に、<嘘>を方便として使うということは、このメルマガの読者の方もされているのではないかと思います。

 

注意したいのは、その<嘘>が「横着な嘘」とならないことです。

「言い切ってしまえば勝ち」と高らかに宣言しても、空間と時間を共にしている人には「横着な嘘」は通じてしまいます。

一歩間違えば、一緒に働く仲間に「つくづくこんな会社にいたくない」と思わせてしまうかもしれません。

ガバナンスの目標と現実とのギャップに「しらけ」を生じないような注意がなければいけませんし、

実質的な「搾取」が生まれないように各方面を律することも重要です。

 

ガバナンスの仕事をする機会が増えるにつれ、この仕事は思索の深みや経験の奥深さを求められる仕事ではないかと思うようになってきました。

次から次に流行りのテーマを追いかけるのではなく、

その移ろいゆくテーマの奥底にある「変わらないもの」をとらえようとしなければ、うまくいかないような気がします。

 

私の通っていた中学・高校には石碑がありました。

そこには初代校長の言葉として

「すべてのものは過ぎ去り そして消えて行く そのすぎ去り消えさって 行くものの奥に在る 永遠なるもののことを 静かに考えよう」

という言葉が刻まれています。

卒業後四半世紀を経て、中高時代に巡り合った言葉が重みをもって伝わってきます。

 

 

 

 

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2024/3/6★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~AI Safety Institute~

 

2月14日に日本政府はIPAのもとにAIの安全性の評価手法の検討等を行う機関として、「AIセーフティ・インスティテュート」を設立しました。

IPAの中に設置されているのは、各国でのAIガバナンスやAIの安全性についての取り組みがサイバーセキュリティ機関で行われていることに足並みを揃えてのことのようです。

「AIセーフティ・インスティテュート」の業務は「安全性評価に係る調査、基準等の検討」や「安全性評価の実施手法、国際連携に関する業務事務」とされています。

日本政府が推進するアジャイルガバナンスでは民間が評価基準等を定めるような説明がされていたのですが、

国としての統一した評価基準が生まれるのか、今後の動きを注視しておきたいと思っています。

 

2月29日に東京未来ビジョン研究センターと東京大学大学院法学政治学研究科の共同シンポジウム「AIの知財とガバナンスの論点」が開催されました。

東京大学はAI政策について興味深いウェビナーやシンポジウムを開催されているので、この分野に関心がある方はセミナー情報を確認しておくと良いでしょう。

AIと知財(著作権法)の議論はとても難しく、なかなかすっきりした整理ができません。

文科省の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」のパブコメには、なんと25,000件近くのコメントが寄せられており、関心の高さが伺えます。

LLMが普及したことによって直接影響を受ける人が増えたことが原因の一つなのでしょう。

「享受」しているかどうか、「類似性」があるという線引きはどこかといった点が論点となるようなのですが、

誰にでも理解できる線引きにはなっていないところが難しいところです。

AIの問題は知財だけではありません。

基本的権利、民主的価値、社会正義といった民主主義国家の普遍的な価値を堅持するためのガバナンス確保という視点も必要です。

私の周りではむしろ、AI倫理という文脈でAIガバナンスに関心を寄せる人が多い気がします。(欧米でも著作権の問題は取り上げられます。念のため。)

AIガバナンスの肝は、「実現したい価値を実現するための手段」であることです。

シンポジウムで指摘されていたように、ガバナンスは自転車のサドルと似たもので、

「固定したものではなくある程度の自由度をもって動くことで、行き先をコントロールするための司令塔」としての役割であることを覚えておく必要があります。

グローバルでは、人間社会を維持するためのアプローチとしてガバナンスが語られます。

この視点はとても大切です。

 

翻って、日本のAI政策のモチベーションはAI事業者ガイドラインに記載されている通り、

「少子高齢化に伴う労働力低下等の社会課題の解決手段として、AIの活用が期待されていること」にあります。

内閣府によると、

「総人口に占める65歳以上の者の割合(高齢化率)は、平成72(2060)年には17.8%にまで上昇するものと見込まれており、今後半世紀で高齢化が急速に進展することになる」

という状況が日本の現実です。

日本政府の気持ちを平たく言えば、「このままじゃ国が崩壊する。テクノロジーで回避できるのではないか。」と言った切羽詰まった状況でAI政策を行っています。

 

AIのようなテクノロジーを活用しないと日本社会が維持できないという理由が背景にあるからこそ、

積極的にAIを推進しているのであり、「リスクを抑え込めないからAIを使うのはやめておこう」という選択肢は、もはやあり得ないと言って良いでしょう。

そんな中で作られるルールには注意が必要です。

 

今、日本ではAIガバナンスの認証制度を作ろうという動きも出てきています。

その際、AIセーフティ・インスティテュートも重要な役割を果たすことでしょう。

AIガバナンスの認証は、AIを活用する企業であれば必ず導入せざるを得なくなると思います。

ただ、グローバル企業が注意しておくべきことは「日本の基準」は前のめりな基準であり、

より中立的な立場からの基準を提示しているものが国外にあるという視点です。

自社のスタンスとビジネス上の戦略を考慮したうえで、何に準拠するかを考えることが望ましいでしょう。

多様な情報を容易に入手できる時代だからこそ、自分たちの視点から最適な基準を選択していきたいものです。

 

 

 

 

 

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~ソルーションを売る~

 

私は運がいいことに、すごいなと思う方と時間をご一緒させてもらうことが割と多くあります。

そのような方たちはプライバシーやAIの仕事をしている方ばかりではありません。

それでも気さくに話をしてくださり、楽しい時間を過ごさせていただいています。

そういった方達と話をしていて何が面白いかというと、彼らの仕事の取り組みが、

いわゆる教科書的な取り組みと少し違う型破りなところだと思います。

一般的な言葉でいうと、私がすごいなと思う方たちは、会社やお客様の課題の解決をされています。

ビジネス風に言えば「ソルーションを提供している」と言い換えていいと思います。

同じ会社や業界の他の人たちも似たようなことはしています。

ただ、「似たようなこと」と彼らが体現しているソルーションとは体感として違うことが分かります。

前者はbook wise (勉強した賢さ)で、後者はstreet wise (路地で学んだ賢さ)なのだと思います。

MBAで学べるのはbook wise、現場で身に着けるのがstreet wiseです。

聞いている人がワクワクするのは、street wiseの方です。

 

三遊亭圓歌という落語家が真打に昇格したとき、同時に昇格した林家こぶ平だけにフラッシュが当たり、

同じ楽屋にいた三遊亭圓歌にはマスコミはまったく見向きもしなかったそうです。

悔しくて楽屋を飛び出した三遊亭圓歌に恩人は

「うさぎとかめの童話で、うさぎがどうしてかめに負けたのか言ってごらん」と声をかけたと言います。

「うさぎにはいつでも勝てるという油断があったからです」という三遊亭圓歌の答えを否定して、恩人はこう続けました。

「かめにとって相手はウサギでもライオンでも何でもよかったはずだ。なぜならかめは一遍も相手を見ていないんだよ。

かめは旗の立っている頂上、つまり人生の目標だけを見つめ続けて歩き続けた。

…君の人生の目標はこぶ平君ではないはずだ。賢いかめになって歩き続けなさい」

人生の目標というと話が大きくなってしまいますが、仕事の取組みという視点にまで話を近づけたら、

この話はstreet wiseな方たちの在り方をよく説明してくれるなと思います。

私が惹きつけられる(そして、彼らのオーディエンス(お客様や同僚)もまた惹きつけられる)、

すごい方たちは、「旗の立っている頂上」しかみていなのだろうと思います。

だから、「そういうアプローチがあったか」と発見の喜びを感じさせてくれるのだと思います。

独創性は、ゴールに向かう工夫と言い換えることができるからです。

 

当社では、プライバシーマネジメントやガバナンスの構築方法についてトレーニングをしています。

その際、「教科書」として「型」を学ぶことができると受講生の方にはお伝えしています。

残念ながら、現場では、「型」通りになることはほとんどありません。

それでも、やはり「型」を学ぶことは大切です。

当たり前のことを徹底してできているかが、大きな差を生むからです。

実際、芸事やスポーツの世界、仕事を極めた人は、誰もが基本の大切さを説いています。

基本ができていない人は伸びないし途中で挫折してしまうといいます。

始まりはbook wiseとなるかもしれません。

でも、その基本を繰り返して身に着けて、ソルーションとしてのプライバシーを自分の持ち場で売ることができるようになった時、

その人は本当の意味でのプライバシープロフェッショナルになるのだろうと思います。

 

 

 

 

 

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~AIの問題についての問題~

 

今年のIAPPの国際カンファレンスはAIが話題の半分以上を占めています。

もちろん社会に大きな影響を与える重要な問題であり、議論は尽くされるべきなのですが、

議論がどこに収れんしようとしているのかは定かではありません。

「信頼できる責任あるAI」とは一体何を指すのか、どのようにすれば実現するのか、

について納得のいく議論をまだ目にすることができていないからかもしれません。

 

そんな思いを抱いているとき、

OECDのAIについてのブログ( https://oecd.ai/en/wonk/safety-ai-the-challenger-disaster )でAIの標準化責任者であるJames Gealy氏の意見を読み、

少し視界が開けた気がしました。

このブログでJames Gaely氏は1986年に発生したチャレンジャー号の爆発事故と、その調査過程で著名な物理学者ファイマン博士が示した見解を紹介し、

現在のGPAI (General Purpose AI)に対する懸念を示しています。

興味深い内容だったので、ここで紹介しましょう。

 

物理学者のファイマン博士は、チャレンジャー号の事故後編成された事故調査委員会(ロジャース委員会)の委員として参加していました。

独自の考えで行動することで知られていた博士は、時に委員会を欠席し、独自の調査を行っていたそうです。

2月に行われた公聴会で、ファイマン博士はロケットブースターに用いられていたOリングが調査委員会に提出された際、

氷水を持ってくるように言い、氷水に浸したOリングをクランプで挟み込んだ後、

Oリングが元の形に戻らないことを実証しました。

 

==========

”I took this stuff that I got out of your seal and I put it in ice water, and I discovered that when you put some pressure on it for a while and then undo it, it doesn’t stretch back.

It stays the same dimension.

In other words, for a few seconds at least and more seconds than that, there is no resilience in this particular material when it is at a temperature of 32 degrees.”

==========

あなたのシールから取り出したものを氷水に入れてみたのですが、しばらく圧力をかけてから圧力をかけるのをやめると、元に戻らないことがわかりました。

同じ形のままです。

言い換えれば、少なくとも数秒間、あるいはそれ以上の数秒間は、この素材は32度の温度では弾力性がないということす。

==========

 

ファイマン博士と調査委員会は、NASAが同種の実験を行っていれば事故を避けることができたはずだと結論付けています。

 

ファイマン博士はロジャーズ調査委員会の作成した調査報告書に対して多くの面で異議を唱えたようです。

ロジャーズ委員長は説得の末、

ファイマン博士の見解を調査報告書の付録 (Appendix F (https://www.nasa.gov/history/rogersrep/v2appf.htm)) として掲載することで、

かろうじて彼の合意を取り付けたといいます。

 

この事故は人為的な要因が大きかったといわれています。

チャレンジャー号打ち上げ前日、現地は大きく冷え込みました。

ロケットブースターのエンジニアはこのことに懸念を示し、打ち上げの延長を勧告したといいます。

しかし、スケジュールの遅延を嫌ったNASAのマネジメントはこれに反発し、

最終的にロケットブースターの製造元の経営陣は打ち上げに”Go”を出しました。

その結果、冷えすぎて硬直化したOリングがシーリング機能を果たすことができず、

高温の排気が漏れて外部燃料タンクが破裂するという事象に至ったそうです。

 

調査報告書のAppendix Fで、ファイマン博士は冒頭、

スペースシャトルとそのクルーを失う確率をマネジメントは100,000分の1だと信じていたのに対し、

エンジニアは100分の1だと信じていたと述べています。

そして「マネジメントが幻想的な信頼を機械に抱いた原因は何なのだろうか?」

(“What is the cause of management’s fantastic faith in the machinery?”)と述べています。

 

ファイマン博士は、Oリングの問題について

「これらの飛行が受け入れられ、成功したことが安全性の証拠とされる。しかし、浸食やブローバイは設計が想定したものではない。

何かが間違っているという警告なのだ。装置は期待通りに作動しておらず、それゆえ、さらに大きく逸脱して作動する危険性がある…。

この危険性を完全に理解しない限り、以前は大惨事に至らなかったからといって、次回もそうならないという保証はない。」

と続けています。

 

調査報告書のAppendix Fは今なお大きな価値がある文書です。

AIに関わりたいと思っている方にはぜひ一読していただきたいと思います。

現在、人間レベルのAIモデルやAIシステムを研究開発するために何十億ドルもの資金が投入されています。

その一方で、AIの安全性検証の方法確立に向けた取組については、このメルマガで紹介したRyan氏のように、心ある一部の人が自分の資産を元手に行っているケースが多くみられ、資金が圧倒的に不足しているのが現状です。

さらに悪いことにAI監査の基準を作る人々が、自らの利益誘導に動いている状況も散見されます。

その様子は中国の歴史で繰り返し現れる王朝の腐敗した官僚制度のようです。

 

James Gaely氏は、

「私は、潜在的に危険な能力の領域に侵入しているにもかかわらず、スケーリングが継続することを前提にしているのではないかと危惧している。

スケールを第一に考え、リスクを第二に評価するのであれば、安全性とリスク管理は二の次にならざるを得ない。」

と述べ、警鐘を鳴らしています。

ファイマン博士も報告書で

「成功する技術のためには、広報よりも現実が優先されなければならない。自然の摂理はごまかすことができないのだから」

(“For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for nature cannot be fooled.”)

と言っています。

 

AIモデルを構築・配備する組織は、安全に対して十分な余裕を持ったスケジュールに従わなければならず、

強固な安全文化を持たなければなりません。

さらに、これらのシステムが実際にどのように機能するのかについて、理解を深める必要があります。

 

ファイマン博士はこう述べています。

==========

Let us make recommendations to ensure that NASA officials deal in a world of reality in understanding technological weaknesses and imperfections well enough to be actively trying to eliminate them.

They must live in reality in comparing the costs and utility of the Shuttle to other methods of entering space.

And they must be realistic in making contracts, in estimating costs, and the difficulty of the projects.

Only realistic flight schedules should be proposed, schedules that have a reasonable chance of being met.

If in this way the government would not support them, then so be it.

NASA owes it to the citizens from whom it asks support to be frank, honest, and informative, so that these citizens can make the wisest decisions for the use of their limited resources.”

==========

私たちは、NASAの職員が技術的な弱点や不完全さを十分に理解し、

それらを積極的に排除しようとする現実の世界に対応できるような提言をしよう。

NASAの職員は、シャトルのコストや有用性を他の宇宙進出の方法と比較する際、

現実の世界に身を置かなければならない。

そして、契約を結ぶ際、コストを見積もる際、プロジェクトの難易度を見積もる際には、現実的でなければならない。

現実的な飛行スケジュール、つまり達成できる見込みのあるスケジュールのみが提案されるべきである。

そうすることで、政府がNASAを支援しなくなるのであれば、それはそれで仕方がない。

NASAは、市民が限られた資源の使用について最も賢明な決断を下せるように、

支援を求める市民に対して、率直で正直で有益な情報を提供する義務がある。

==========

 

シャトルをAIと置き換えても、この提言はまだ有効に聞こえます。

 

 

 

 

 

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~プライバシープロフェッショナル~

 

プライバシーの専門家が足りない、という話をよく聞きます。

プライバシープロフェッショナルというのは、まだ成長分野のようで、

私もLinkedInでたまに「どうすればプライバシープロフェッショナルになれるのか?」という質問を受けます。

 

一口にプライバシープロフェッショナルといっても幅が広いわけで、定義するのは難しいと思います。

私の周りには30年超プライバシーの仕事をしてきた人をはじめ、10年以上プライバシーにかかわっている人がたくさんいるため、

自分がプライバシープロフェッショナルとはいつまでも思えません。

いいお酒と同じで、年季の入ったプライバシープロフェッショナルは自然にプライバシープロフェッショナルだな、と感じます。

(そういうプロフェッショナルと仕事ができるのは幸せだと思います。)

 

プライバシープロフェッショナルになるにはIAPPの資格が必須なのでしょうか?

これは、正直わかりません。

私が最も尊敬するプロフェッショナルの一人はIAPPの資格を持っていません。

それでも、彼女はプライバシーを深く理解していると誰もが知っています。

彼女を見ていると、資格はやっぱり付加的なものかな、とも思います。

 

当社ではIAPPのトレーニングを提供しています。

そんな当社がIAPPの資格は役に立つかわからないというわけにはいきませんので少し擁護しておくと、

IAPPのトレーニングを学ばれたプライバシープロフェッショナルは、

概ねバランスの取れたプライバシーの見方をされていることが多いように思います。

独学でプライバシーをされてきた方とは異なる安定感を感じます。

私はよく言うのですが、IAPPのトレーニングを受講する良いところは、

「型」となる基本を知ることができることにあるのだと思っています。

 

「型」とは面白いものです。

普遍性を持つものでありながら、「型」だけを愚直にしていると面白みがなくなります。

どこかで「破」を経験し、プロフェッショナルならではの表現を必要とします。

「破」は残念ながら教えられません。

そのプロフェッショナルのパーソナリティに結びついているように感じます。

IAPPのトレーニングでAと書いているからAをしなければならない、という性質のものではない、

ということを理解できれば、「破」のプロセスへ一歩踏み出せるように思います。

 

ここ数か月、日本の自動車業界で不正検査のニュースが広まっています。

昔メーカーで仕事をしていた私としては、とても残念なニュースです。

日本の製造業の現場にあった「愚直さ」を重んじる空気が薄れてしまったのかな、と思うからです。

「破」は手を抜くこととは異なります。

基本を外さず、表現を変えるのが「破」です。

プライバシーマネジメントも、雑にしてはだめです。

モノづくりに限らず、「当たり前をばかになってちゃんとやる」というのはよい仕事の基本です。

「破」のプロセスでも、当たり前は大切にしておいてほしいです。

 

プライバシープロフェッショナルは法律や技術、組織、お客様、プロジェクト、と様々なテーマで仕事をします。

その幅広さが面白みだと思います。

プライバシープロフェッショナルは”people’s people”である必要があるため、人としての魅力も大切です。

これまでの仕事の経験と、生きてきた道のりが役に立つのがプライバシープロフェッショナルです。

 

データプライバシーをしていると、ついついデータを保護することにばかり目が行きます。

でも、データは「使用」するために集めていることを忘れてもいけません。

だから、組織の中では、プライバシープロフェッショナルは、データ保護責任者となると同時に、

プライバシープロセッショナル(privacy processional)として個人データ処理をいかに促進するかについて議論することもあり得ます。

この両軸を忘れないようにすることが、案外いいプライバシープロフェッショナルの条件ではないか、と感じます。

 

 

 

 

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~プライバシーウィーク~

 

東京で1月23日に開催された IAPPのイベントは大盛況でした。

私も出張に合わせて伺うことができ、充実した2時間を過ごさせていただきました。

幹事をされているセガの岡本さん、西村あさひ法律事務所の河合さん、長嶋大野常松法律事務所の早川さん、

そして何より会場を提供してくださったセガのスタッフの皆さんに感謝が尽きません。

 

今回のプライバシーウィークは「プライバシー文化を企業内でうまく醸成するには?」というテーマでディスカッションをされていました。

ANAの定行さん、セガの石田さん、楽天の辻畑さんと、大手企業の第一線を率いている方々がパネリストとして登壇されていて、

岡村さんの進行のもと、とても良いディスカッションを聞くことができました。

 

興味深かったのが、皆さん社内外に向けてポータルサイトを作るという取り組みをされていることです。

楽天さんはプライバシーサイトの運営に4名もの方が関わっており、マンガやクイズ等さまざまな方法で興味を持ってもらおうとしているそうです。

本気度合いが伝わってきますね。

その一方で、アクセス数が課題の1つということもおっしゃっていました。

プライバシーの専門家とそうでない方との間の温度感のギャップを埋めるのは容易なことではありません。

 

ANAの定行さんが「営業とかマーケティングはボトムアップが普通だけれども、ガバナンスはトップダウンだ」とおっしゃっていたのは、

改めて組織の中の仕事の流れの複雑さに気付かされるコメントでした。

トップダウンというと窮屈に思うかもしれませんが、

十分に浸透すると「プライバシーを保護するということが当たり前のこととして浸透していて、そこを起点に取り組みの可否を考える」(Microsoft久保田さん)という状態になるので、

その領域にまで到達したいですね。

 

プライバシーガバナンスの在り方は、会社によって異なっていて良いと思います。

最終的に守りたいものを守ることができればいいのです。

プライバシーの場合、人の権利と自由、利益を大切にできる組織になっていたら良いのだと思います。

 

私個人の話をすると、今回の会にはMicrosoftの久保田さん、アンダーソン毛利友常法律事務所の中崎さんが来られており、

昔一緒にチェアをした人達と久しぶりに再会できたことがうれしかったです。

会の後、短い時間でしたが3人で少し話をして近況を交換しました。

僕らの時からは考えられないくらい大きな会になりましたね、と話しながら楽しい時間を過ごすことができました。

 

中崎さんはAIについての本をそろそろ出されるそうです。

中崎さんの本はポイントを端的に分かりやすくまとめてくださるので、いつも重宝しています。

皆さんもぜひチェックしてみてください。(GDPRの本は改訂版を出す予定があるそうです。)

 

▼IAPP

https://iapp.org/

 

▼IAPPメンバーシップへの参加はこちら

https://iapp.org/join/

 

 

 

 

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~プライバシーバイデザイン~

 

昨年から今年にかけて、マーケティング活動や社内データ活用に関する取り組みが、

実装直前に法務からのチェックが入り止まるというケースを目にする機会が増えてきました。

法務部門の方がデータ利活用のリスクを評価することも増えているのではないかと思います。

こういった事例が生じるということは、日本企業のデータへの関心も高まっているということなので良いことだと思います。

 

私たちの下へは、そのような状況が生じた中で、どうにか前に進める方法を考えたいというご相談もあります。

そういった際には、データ処理契約の締結やプライバシーノーティスの改訂といった作業が発生する他、

一部のデータを利用対象から外すといったことを検討しなければなりません。

こういった手戻りは、ビジネスにとっても好ましくありません。

 

プライバシーバイデザインは、事業者の立場からも重要な概念です。

これは製品設計において、コンセプト段階で故障モードを特定するのと同様に、

ビジネス設計において、コンセプト段階でプライバシーに関する問題が潜んでいないかを確認する作業を行うものです。

セキュリティバイデザインという言葉もあるため、情報システム系の方にも馴染みのある概念ではないかと思います。

 

プライバシーバイデザインを行うメリットは、ビジネスの後戻りを防ぐことができることだけでなく、組織の信頼を向上することができることにあります。

データの時代にあっては、データをフェアに利用することが最も重要な姿勢となります。

データプライバシーの基本は、個人の権利と利益、自由を保護することにあります。

個人が大切にされていると感じれば、その組織に対する好感度が向上することは自然な流れです。

 

プライバシーバイデザインは、プロセスを通じた活動です。

従ってプライバシーガバナンス、あるいはプライバシーマネジメントを組織の中で運用しなければ、スムーズに行うことができません。

プライバシー対応に「流れ」をもたらすのがプライバシーガバナンスであり、プライバシーマネジメントだからです。

 

私は以前、プライバシーソフトはまだ導入する必要はないかもしれないと思っていましたが、

この数か月はプライバシーソフトがないと、特に大手企業と呼ばれる企業の方はプライバシーマネジメントが困難ではないかと思うようになってきました。

それくらい、プライバシーに関する考察が一般的になってきたということなのだと思います。

プライバシーソフトは、プライバシー対応に「流れ」をもたらすものでなければなりません。

一部分をシステムに置き換えるだけだと、結局細分化されて食い違いが生じるからです。

ソフトを利用するのであれば、「流れ」を意識して利用するのが良いでしょう。

 

AIガバナンスにおいても、「流れ」を意識して管理するという意味では同じです。

今はガバナンスが本当に大切な時代だと思います。

換言すれば、データを扱う時代の組織運営の在り方を探る時なのだと思います。

 

 

 

 

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合格者様インタビュー ~総集編~

 

本日のnews topicでは、今まで当社のIAPP公式トレーニングを受講頂いた方々の内、認証資格に合格をされた方々のインタビューについて、

総集編として皆様から毎度コメントをいただく、当社トレーニング講師の評価についてまとめさせて頂きました。

 

・決して安い投資ではなかったですが、それでも自腹で受講した甲斐がありました。

 

・講師の方のお人柄もあると思いますが、受講後のフォローアップ講座等手厚くフォローを頂きました。

 

・CIPMに関しては日本語での情報が限られているため、フォローアップのおかげで安心して試験対策を進めることが出来ました。ありがとうございました。

 

・CIPP/Eはテストセンターの選択肢も多く時間帯も選べて快適でした。

仕事や日常生活の中での試験準備・時間確保は大変でしたが、頑張れてよかったです。

貴社のフォロー(主に講師の方)にも大変感謝しております。ありがとうございました。

 

・Exam preparationを活用し、疑問点は全て講師の方に質問させていただきました。

テキストには無い参考情報もご提供いただき、大変参考になりました。

 

・講師の方の模擬試験解説と個別フォローアップに感謝しています。

2023年4月に開催されたIAPPグローバルプライバシーサミット会議(ワシントン)にも自信を持って参加でき、とても良かったと感じました。

 

・記憶の定着・印象や効率という観点からも、日本語でのトレーニングは非常にありがたかったです。

また、トレーニング後も、講師の方が時間を取って下さり、非常に懇切丁寧にアドバイス等をして下さったので大変感謝しております。

講師の方のサポートがなければ、到底合格できなかったと思っており、とても受講料以上の価値があったと個人的に思っております。

 

皆様、当社のトレーニング講師に対して高い評価を頂き、こちらこそ感謝をしております。

今後もより良いトレーニングにしていくため、皆様のお声を反映できればと考えております。

温かいメッセージをたくさんありがとうございました。

 

 

 

 

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~新年のご挨拶~

 

2024年が始まりました。

元旦から能登半島の大地震、羽田空港の飛行機事故と平穏とは言えない幕開けでした。

今年はオリンピックイヤーでもありますが、台湾の総選挙、欧州議会の選挙、米国の大統領選挙と政治のイベントも数多くあります。

不確定要素が多くある中、欧州ではAI法が成立し、今後数年かけてAI規制が本格化します。

日本の個人情報保護法の見直しも始まり、データ業界はもうしばらく落ち着かない日が続きそうです。

 

私の新年も落ち着かないものでした。

この年末は溜まっていた仕事に取り組み、新たな年に向けていくつか打ち合わせを重ねる日々でした。

ワシントンD.C.でのパネルディスカッション等、2024年も国外で活動する機会をいくつか頂いています。

新しい取り組みとしては、AIについての活動が増える予定です。

私がAIガバナンスについて学んでいるForHumanityの活動の一環として、AI監査の基準作りのコミュニティを国内で立ち上げようとしているほか、

まだ確定していませんが、今年はAIガバナンスをテーマとした1日トレーニングを開く話もでています。

 

データプライバシーの話題では、データについて「有意な選択を提供する」ということが益々重要となってきました。

例えば、2023年末にEDPBがCookieについての誓約(pledge)の草案を公表し、ICOがCookieコンプライアンスを徹底するよう通知を出しています。

2024年元旦からは、Googleがcookieやデータについて透明性を高める通知を公表するようになりました。

こういった流れの当然の帰結として必要となるのは、組織内のデータについて、正しく理解できる仕組みを整備することです。

国外では担当者を一人置けばよい、ソフトウェアを導入すればよい、というもの以上の管理が期待されるようになっています。

データフローはグローバルなものなので、日本でもこのトレンドはいずれ影響を及ぼすことでしょう。

有意なデータガバナンスの実装に向けて、できるだけ早い段階で取り組んでいるほうが良いと感じます。

 

まだまだ話題が尽きないAIについては、年末に公表された欧州委員会によるAI法のQ&Aがとても洞察のあるものとなっています。

EUは大半のAIについてはAI法の規制対象外となるだろうとしながら、ハイリスクAIや汎用AIの規制アプローチを確立しています。

CEマークを活用することとなるため、今後は弁護士事務所よりも認証機関が重要な役割を担うことになるでしょう。

また、米国のNISTが”Adversarial Machine Learning: A Taxonomy and Terminology of Attacks and Mitigations”というよくまとまった資料を出しています。

AIのリスクプロファイルの定義は少しずつ充実してきた感があります。

日本のAI戦略会議も、2023年末に事業者向けのAIガイドライン案を出しています。

ソフトローアプローチを目指す日本ですが、内容を読む限り、経産省と総務省はガイドラインに従った運営をAI事業者に求めているように感じます。

追加的な作業の発生とコストアップにつながる内容となっているため、

特にAI事業を生み出そうと努力をしている段階で、

まだ十分な利益を得られていない事業者(おそらく、現状そういった事業者が多数あるはずです)にとっては悩ましいところです。

 

2024年、当社では引き続きデータを安全安心に活用し、人々がその恩恵を受けられるようにお手伝いを行っていきます。

より多くのお客様を支援し、グローバルスタンダードの知見を活用できるように、人員の拡充やパートナー企業の拡充も行っていきます。

 

今年も皆様と一緒にお仕事ができることをスタッフ一同楽しみにしています。

 

 

 

 

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~2023年最後のメルマガ~

2023年も今回のメルマガで最終号となります。

そして、偶然にもこのメルマガも100号を迎えるようです。

2つ目の節目が重なる号ということで、今日は少し趣向を変えて私が仕事で関わっている人について書こうと思います。

 

その人とは、ForHumanityのRyan Carrierさんです。

Ryanはもともと世界銀行で仕事をしており、その後自身のヘッジファンドを立ち上げました。

ビジネスはうまくいっていたのですが、ある時、AIの隆盛を目の当たりにし、ルールがないまま利用が進んでいる状況に

「このままでは世界が壊れてしまうのではないか」という危機感を感じました。

2015年、彼はビジネスをすべてたたみ、どこからも資金援助を受けることなく、たった一人でNPOのForHumanityを立ち上げました。

それから8年、ForHumanityは世界90か国を超える国々から1900名を超える専門家が参加するコミュニティへと成長し、

世界で初めてのGDPR認証の作成に取り組んだりグローバルで共通のAI監査のルール形成に大きな影響を与える団体となっています。

オンラインで話すと、Ryanは「最近みんな僕のことをセレブのような目で見るんだけど、僕はただの一般人でしかないよ。」と笑っています。

それでも、私はやっぱり彼のことをすごい人だと思ってしまいます。

Ryanの言葉にはスピリットがあり、話を聞くたびに、こちらも頑張ろうというエネルギーをもらいます。

信念の力というのでしょうか。

リーダーとはこういう人のことだと感じます。

 

仕事をしていると、運が良ければこういう驚くべき人物に出会うことができます。

自分の人生で大切なことに巡り合い、人生の呼びかけ(calling)に従って行動をし、いつしか多くの人からの支援を得るという人です。

私は、こういう人々に何人出会えるかかが人生の価値じゃないかと思っています。

損や得ではなく、自分にとっての正しさの中で仕事をする。

だから、仕事は楽しく、時間を投じる価値があるのです。

「仕事とは大人にとっての子どもの遊びのようなものだ」という言葉を読んだことがあります。

そうありたいものです。

 

日本でも少し前まではそういう人に出会うことができました。

印象的な人との出会いは、たった一つであっても、私たちの人生に彩を与えてくれます。

せっかく仕事をしてたくさんの人と関わるですから、人生が楽しくなるように過ごしたいものです。

魅力的な人物には本や著作を通じて出会うこともできます。

そんな人の一人として、私の好きな四国に住んでいた詩人、坂村真民さんを紹介します。

残念ながら1998年に97歳で亡くなっています。

彼の詩にこんなものがあります。

 

【生きるのだ】

いのちいっぱい

生きるのだ

念じ念じて

生きるのだ

一度しかない人生を

何か世のため人のため

自分にできることをして

この身を捧げ

生きるのだ

 

2023年が皆様にとって良い年であったこと、そして2024年が皆様にとって喜びに満ちた年であることを祈念しています。

良い年末年始をお過ごしください。

 

 

 

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