2025/4/18<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【DPFの行方】

10年ほど前のことでした。
「グローバル化した今の時代に、第二次世界大戦のような戦争はもう起こらない」と、私はある人からそう教えられました。確かにそうかもしれない、と当時は思っていました。

ところが今、現実は私たちの想像を裏切っています。ロシアがウクライナに軍事侵攻し、アメリカではトランプ氏が主導する“貿易戦争”が展開されています。
会社経営をしているとよく感じるのですが「まさか」と思うような出来事は、時に本当に起きてしまうものです。だからこそ、私たちは知恵を絞り、冷静に、そして柔軟に乗り越えていかなければなりません。

さて、プライバシーの分野でも気になる動きが起きています。
米国とEU間のデータ移転を合法化する枠組みである DPF (Data Privacy Framework) には、「政府による監視が、プライバシーや市民的自由ときちんとバランスが取れているかを監視する」役割を担う Privacy and Civil Liberties Oversight Board (PCLOB) という独立機関があります。

ところがトランプ氏は最近、このPCLOBに所属する民主党員3名を解任しました。もともと欠員が1名あったため、現在この委員会にはたった1名しか残っていません。超党派の複数名で構成されるべきと法律で定められている委員会が、実質的に機能していないという異常事態です。

この事態を受け、欧州の一部の専門家の間では「DPFの十分性認定を再検討すべきではないか」という声が上がり始めています。
現時点では、米国との越境データ移転を行う企業にとって、DPFよりも SCC (標準契約条項) を利用するほうがリスクが少ないといえるでしょう。

私自身、今の米国の政権には大きな懸念を抱いています。
人権を尊重する姿勢や法を守る意識が、ここまで低下してしまっているとは…。私たちプライバシーやガバナンスの専門家にとって、非常に困難な状況です。なぜなら、私たちが大切にしてきた価値観そのものが、いま世界で最も影響力のある国のリーダーによって次々に否定されてしまっているからです。

ただ、決して諦めてはいけません。
トランプ氏の行動に疑問を持ち、問題視している人はアメリカ国内にも多くいます。
ブラック企業で働くのが敬遠されるように、誰も「暴君」の下で働きたいとは思わないのです。

だからこそ、私たちにできることがあると信じています。
それは、どんな時代にあっても倫理と人間の尊厳を大切にする企業文化を支えることです。荒波のような社会情勢の中で、普遍的な価値を守り続ける姿勢は、私たち自身の誇りにつながります。そしてその誇りが、組織を強くするのではないでしょうか。

私たちは、ただ世の流れに流される存在ではありません。
むしろ、自分たちが望む社会のかたちを、日々の仕事を通じてつくっていく担い手なのです。
そんな想いで、皆さんも一歩一歩、お仕事に励んでいただきたいと思います。

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2025/4/4<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【未来を見据えた動きを】

ここ数年、野菜や米の価格が高騰しているというニュースが流れています。天候不良のためという説明がついていますが、それ以上に農業従事者と耕地の減少の影響があるように思います。農水省の公表している統計値では、2024年の作付面積は427万2千ha となっています。1956年の統計値では601万2千haと報告されているので、ほぼ3分の2に減少しています。農業経営体の数は2006年の統計値で193万5800だったのが2019年の統計では118万8800とわずか13年でほぼ半減しています。農業は家族経営で営まれることが通常で、この数字はほぼ農業従事者数の遷移に比例していることが推定されます。ちなみに、農業従事者の平均年齢は2024年の統計で69.2歳です。農業従事者減少の 傾向は今後も止まらないでしょう。

作り手が減り作る場所が減っているのであれば、気候変動への耐性も下がり供給が不足するというのは別に驚くべきことではありません。「異常」な出来事は、理屈を考えればそれほど異常に見えないことがしばしばあります。

私たちが取り組む「ガバナンス」とは、「異常」な出来事の裏にある摂理を見つけるための装置です。「農業統計」が存在するように、ガバナンスは「組織についての統計」を生み出し、組織の運営者が、(その気があれば) その姿を客観視できるようにしてくれます。ガバナンスを観察すれば、組織が適切に運営されているか、健全な精神を宿しているかを見て取ることができます。

ガバナンスを活かせるかどうかは、組織の運営者の能力と力量にかかっています。現状維持と責任をあいまいにする態度では、多くの場合ガバナンスの取り組みは失敗します。ただ、最近のニュースでもしばしば表面化している通り、「問題の先送り」や「問題がそもそもないことにしてしまう」という無責任な事例は発生します。ガバナンスを正常に運営するにはエネルギーが必要であり、そのエネルギーを確保することは容易なことではないからです。ガバナンスを運用するには、組織を大切に思い、より良い場所にしたいと願う、良識があり、規律を備えた、行動力のあるリーダー層の存在が欠かせません。

4月1日のニュースで、新入社員を「おもてなし」する会社が取り上げられていました。企業活動を通じて社会を「おもてなし」することになる人材を、「おもてなし」していては最終的に組織の商品、サービスの品質を落とすことにつながり企業の破滅への道につながりはしないか、という気持ちもわいてきます。100時間を超える残業、性暴力がある組織、暴力や暴言がはびこる職場は論外ですが、だからといって緊張感のない職場も危険なものです。組織文化の変化もまた、「ガバナンス」が提供する指標で検知できます。ルールの遵守違反、苦情や権利請求の件数、インシデントの件数、相談件数、といった数値はリーダー層に多くの情報を伝えてくれます。

会社をより良い場所にするために、ガバナンスを通じて自分たちの組織の現在地を知り、未来を見据えた動きを行わなければなりません。

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