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2023/12/12★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~欧州のAI法は2024年に成立、2026年に施行へ~

 

11月末のデータ法に引き続きAI法の大筋合意のニュースが欧州から流れてきました。

来年の欧州議会の選挙前に道筋をつけておきたいという思惑もあり、議論が加速した側面もあるようです。

いずれにせよ、巨額の制裁金を課す AI規制が生まれることは歓迎すべきことでしょう。

欧州は個人データに続き、AIについても規制の主導権を得たことになります。

AI法はAIを利用すべきでない領域を定める他、高リスクAIについてはリスク評価を求めるというものとなっています。

AIリスクマネジメントは個人データのリスクマネジメントと似ていますが、

ステークホルダが多岐にわたる中でいかにバランスをとることができるのかが重要なポイントとなっています。

実際、プライバシーマネジメントでも、法務部門やコンプライアンス部門が用意したリスク評価がビジネスの運営上支障をきたしてしまう事例がいくつか生じているように、

リスク評価とはステークホルダ横断で行わなければ問題を生じてしまいます。

裏を返せば、今まで以上にコミュニケーションが重要な時代となっているということです。

 

日本政府は、少子高齢化解消のためのSociety 5.0実現という目標の下、

新技術に規制を課さずソフトローアプローチで技術導入を後押ししようとしてきました。

AI法が成立することで、この中立なアプローチは少なからず脆弱なものへとなることが予測されます。

AI法はAI開発にとってデメリットとなるのでしょうか?私はそうは思いません。

規制があることで開発者は「境界」を知ることができ、これが企業の逡巡の時間を減らす可能性があると考えるからです。

「自由にしてもいいよ」というのは友好的な態度に見えますが、

多くの場合、「ここまでならしても大丈夫」と言われる方が人はチャレンジしやすいものです。

アジャイルガバナンスというアイデアは、最終的に「誰が猫に鈴をつけに行くか」というチキンゲームになってしまった側面があったのかもしれません。

「決めることができない」というのは、相対的にマイナスの影響の方が多い気がします。

 

ところで、最近CJEUで興味深い判断が行われました。

ドイツのある企業の自動化した意思決定の利用についてのものです。

自動化した意思決定を用いたローン審査に落とされた個人が当該企業にアクセス権行使を行ったところ、

一部の情報は「企業秘密」を理由に開示を拒否されました。(“C-634/21: SCHUFA Holding (Scoring)”)

このケースではローン審査のための信用スコアを提供していたサードパーティが「自動化された意思決定」を「行った」と判断すべきかがCJEUに確認されました。

信用スコアを計算しただけであり、意思決定はサービスを利用した企業が行った、というロジックです。

CJEUは「「契約の確立、実施、撤回」が個人の信用スコアに「強く依拠している場合」(draws strongly)」には、「自動化した意思決定」を行っているものとみなし、

GDPR第22条第2項の例外が適用されない限りは実施してはならないと明確化しました。

また、GDPR Art.13/14の透明化の要件も満たす義務が生じ「意味のある説明」を行うようにと示唆しています。

 

この判例は今後のAIの利用にも影響を与えることでしょう。

機械学習によって行われる判断に対して「意味のある説明」を行うことを事業者は求められることになります。

人は「アルゴリズム上の関数を呼び出して計算したところこの結果になりました」、という説明では納得できません。

となると、そのアルゴリズムについて、どこまで説明すればよいのかということが大きな問題となるはずです。

このような情報を、汎用AIの利用者で製品に組み込んでいるだけの事業者が行えるとは想像しにくいので、

結局モデルを構築したおおもとの事業者がその責任を果たすように求められることになるのかもしれません。

そうなると、今度は「有意な説明」を得られるのか、という疑問が生まれてきます。

 

AIに関するニュースに世間は沸き立っていますが、規制環境という観点からは非常にきわどい綱渡りをしている状況に感じます。

この業界に関わることになった人間の一人として、しっかり仕事をしなければならないと思うこの頃です。

 

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2023/12/8★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~EU データ法~

 

気が付けば12月も一週間が過ぎようとしています。

今年は時間が経つのが早い気がします。

気候変動のせいで季節感がずれてしまっていることも一因かもしれません。

それに、近年は新たな戦争の勃発等、多くのイベントが続いていることもあるのでしょう。

 

そんな中、欧州からEU理事会がデータ法(Data Act)を採択したというニュースが11月末に流れました。

この法律は、EU域内で生成されたあらゆる経済分野のデータに誰がアクセスし、

利用できるかについて新たなルールを定めるもので、データ市場の活性化目指すものです。

特にデータの価値を企業のみではなく個人に還元し、データへのアクセス性を高めるという点で画期的なものと感じます。

このコラムでも、デジタルエコノミーはデータのコントロール権拡大に向かっていることを指摘してきましたが、

その流れが加速しているといってよいでしょう。

 

▼プレスリリース

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/11/27/data-act-council-adopts-new-law-on-fair-access-to-and-use-of-data/

 

上記を読むと

「スマートオブジェクト、機械、デバイスを通じてデータが生成される場合、強化されたポータビリティの権利を通じて、個人と企業の双方に、異なるサービス間からデータを容易にコピーまたは転送し、データをよりコントロールできるようにする」

と述べられています。

 

GDPRで用意したブレーキを軸に、欧州はいかに加速するのかを検討するステージに入っています。

ご存じの通り、2022年には企業、個人、公共部門によるデータ共有を促進するためのプロセスと構造を構築することを目的としたデータガバナンス法が成立しています。

今回成立したデータ法は、欧州で成立した二番目のデータ法規制です。

誰がどのような条件のもとでデータから価値を創造できるかを明確にするものと位置付けられています。

データの価値を最大化するためにはデータ流通を促進することが必要です。

 

データ法は数週間以内にEU公報に掲載され、掲載後20日目に発効します。

適用は発効日から20カ月後です。

ただし、第3条第1項(新商品のデータへのアクセス簡略化の要件)は、

データ法の発効日から32ヵ月後に上市されるコネクテッドプロダクトおよびそれに関連するサービスに適用されることになります。

システムの再構築という観点からはスケジュールが少しタイトですね。

 

データ社会に移行すると、今度はエネルギー消費の問題が生まれてくる可能性があります。

AIの活用も進む中、コンピューテーションとシステムの冷却に要するエネルギー消費は増加する一方でしょう。

そのコンテクストからは、気候変動についての国際会議COP28の決定がより重要性を増すことも想像されます。

考えることの多い時代です。

 

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~プライバシーの仕事~

 

先週も当社のCIPP/Eトレーニングから認証合格者が一名うまれました。

嬉しい報告に、私たちスタッフ一同、毎回とても喜んでいます。

プライバシーの専門的なトレーニングを受けた人材が増えることは、デジタル時代においてとても大切なことです。

私たちは、ビジネスを加速するための安全装置としての役割を果たしています。

ブレーキがあるからこそ高速で車が走ることができるように、

プライバシーについてよく理解した専門家がいるからこそ、個人の権利利益を保護しつつビジネス活動を自由に行うことができます。

規制が強化され消費者の認識が高まるなか、

プライバシーへの正しい理解を持ち正しい行動を促せる専門家を持たない組織は摩擦が増え、ビジネスの失速を招きかねません。

組織におけるプライバシーの専門家の育成は重要な経営課題の一つと位置付けて良いでしょう。

 

今週はLINEヤフーのデータ漏洩がニュースを賑わせました。

こういったニュースを目にすると、「大手なのに」と眉をひそめる人もあります。

ただ、データ漏洩は人がかかわる限り発生するものと考えておいた方が良い気がします。

人はミスをするものだからです。

実際、日本でもデータ漏洩事案は多数発生しています。

個人情報保護委員会の公表している「令和5年度上半期における個人情報保護委員会の活動実績について」を見ると、

民間部門での4月から9月のデータ漏洩の通知は3,154件とされています。

わずか半年間の間にこれだけの通知が行われていることからもわかる通り、

データ漏洩自体は決して珍しいものではありません。

データ漏洩は発生するものです。

大切なのは、データ漏洩が発生したとしても個人への危害が発生しない安全設計を行うことです。

データの有用性を害さない形での仕組みの構築が求められます。

プライバシー強化技術(PETs)のテキストが出始める等、プライバシー保護のための技術スタックも準備されつつあります。

いろいろな失敗を経ながらも、世界は少しずつ前進していることを感じます。

世の中の変化を感じながら仕事ができるのも、プライバシーの仕事の面白いところです。

 

プライバシーの仕事は技術的な要素も多く含んでいます。

プライバシーマネジメントに本格的に取り組んでいる企業の話を聞くと、

プライバシーチームが法律的な背景を持ったスタッフとエンジニアの背景をもったスタッフから構成されていることがよくあります。

その目指すところは法的な要素と技術的な要素との橋渡し(ファシリテーション)をうまく行うことです。

私の個人的な感覚では、法務の背景、セキュリティの背景に加えて、

営業やマーケティングの背景を備えた人がいるのが理想的なチームのように思います。

法務やセキュリティの専門家はテクニカルすぎるケースも多くみられるので、

ソーシャルな要素もチーム内に持っておきたいと感じます。

 

データ系の新興テック企業では、現場と技術者、現場と法務担当者の間を橋渡しするポジションを用意していることもあります。

コミュニケーションを管理することで、サービス開発やセールスのスピードを落とさないということが意識されているようです。

彼らは世界中を飛び回りながら調整を続けています。

世界中を飛び回りながら仕事をしたい人や好奇心の旺盛な人には、こんなポジションは面白いかもしれません。

 

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~ユーザーコントロールは増加するか~

 

私は月に1度か2度東京に出張して、お客様や関係先と打ち合わせをさせていただいています。

少しずつお会いしたい方々が増えてきて、なかなか毎月会いたい方全てにお会いできるわけではないのですが、

それでも情報交換を通じて多くの刺激をいただける時間となっています。

 

今回も、とある関係先をご訪問した際に、データ保護とプライバシー保護についての話で盛り上がり、洞察をいただきました。

日本にはプライバシーの専門家はまだまだ絶対数が不足しているように感じますが、

その一方で、プライバシーの専門家として活躍されている方には優れた洞察を持っている方が多くいらっしゃいます。

一人ひとりの能力の高さは、日本の強みだなと感じます。

 

ところで、最近ユーザーコントロールというキーワードに出会うことがしばしばあります。

 

先日、ドイツの判例を読んでいるとGoogleがクロスサイトトラッキングについてユーザーが選択できるようにするというものがありました。

(Bundeskartellamt gives users of Google services better control over their data)

この判例は、ドイツの競争法に基づくものであり、大手デジタル企業によって寡占されているデータについて争われたものであり、

これによって一部の企業が市場において力を持ちすぎないようにすることを目指しています。

興味深いのは、その手法として採用されるのが

「ユーザーに対し、サービス間でのデータ処理について自由、具体的、十分な情報を提供した上で、ユーザーが明確な同意を与えられる機会を提供しなければならない」

というユーザーコントロールであるという点です。

日本の情報銀行もユーザーが自分のデータの利用の仕方について「考える」ステップを付与することでコントロールを増加しようとしています。

データの世界でのキーワードは、ユーザーがいかにコントロールできるか、ということです。

 

インターネットは無料サービスで成り立っている一方で、

ユーザーが知らないうちにデータを提供しており、そのデータが無料サービスを支えています。

ユーザーはその事実を随分前から耳にしていたはずですが、

その事実に対してアクションを起こすようになったのは近年のことのように思います。

ユーザーのプライバシーに対する期待が変わってきたことが一因にあるのでしょう。

 

Googleは消費者のトラストを優先するという方針をいろいろな場所で公表しているため、

ユーザーにコントロールを付与するということを積極的に行っている印象があります。

Googleの動きが他のデジタルマーケティング事業者に影響を与えるかは未知数ですが、

ビジネスにおいてプライバシーの重要性は確実に高まっているように感じます。

日本の事業者も、変化に備えておくとよいかもしれません。

 

 

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~日本のAIガバナンス~

 

IAPPのトレーニングでまた新たな合格者が生まれました。

皆さん、忙しい中時間をとって勉強をされているのをみると頭が下がる思いです。

当社では引き続き、プライバシーの資格取得を目指す方々のご支援を続けてまいりますので、

IAPPの資格を検討されている方はぜひ受講をご検討ください。

先日米国のバイデン大統領が署名したAIに関する大統領令では、

アメリカのプライバシーに関連する連邦法制定を促す項目も含まれていました。

それにあわせて当社でもCIPP/USトレーニング提供の準備を進めています。

こちらもご期待ください。

 

秋になり、日本の公的機関や準公的機関によるイベントが増える時期となりました。

AIの分野でもいくつかイベントがあり、私も時間を見つけて内容を確認するようにしています。

先日は東京大学のAI監査についてのウェビナーを拝聴しました。

私が受講しているForHumanityのトレーニングとの比較もできて、非常に面白い時間となりました。

簡単な印象レベルの話をすると、ForHumanityはグローバルな監査の仕組みを模索しているのに対し、

東京大学の発表は国内にフォーカスしているため小さくまとまってしまっている感がありました。

国内に限定したAIシステムというのは市場もシュリンクすることを考えると、

ビジネスとしての高揚感も限定的な気がします。

現在のようにまだ基準がない段階であってもAI監査に対する期待値は高いようです。

そんな時にどこでAI監査を受けるかは戦略的な決定になると思います。

私としては、グローバルな視点で監査を受けておく方がガラパゴス化を避けられるように感じます。

 

AIガバナンスの議論を聞いていると必ず指摘されるのが、監査する側の育成の重要性です。

従来のシステム監査や会計監査の基礎をもとに、AIシステムへの理解が必要となり、必要とされるスキルセットが広範に及ぶからです。

東京大学のウェビナーではチームでの実施が求められると繰り返し指摘されていました。

チームで実施する場合には、チーム内での認識あわせから実施する必要があるため、その難しさもあります。

チームビルディングがより重要となります。

これは、独立性の中で仕事をしてきた監査人の苦手な分野かもしれません。

ボトルネックとは案外、専門性の外にあるものです。

 

東京大学のウェビナーに登壇していたのは大手監査法人の方々だったのですが、

監査=大手監査法人という前提があるような印象もあります。

これ自体がバイアスである可能性もあるため、それを無批判に受け入れるべきかというのも重要な視点だと思います。

概して日本の政策に関する議論は固定された専門家が入れ代わり立ち代わり登壇するということが行われているため、

それによるメリットとデメリットの評価はメディアを含めた第三者に期待したいところです。

 

日本のAIガバナンスについての議論は、グローバルな視点からみると先端をいっていることは間違いありません。

研究者の方々も優秀な方が多くいらっしゃるので、その功もあって日本の高い評価を受けていると思います。

制度が決まっていない現在に在っては、日本の研究者の方々の検討結果を精読しつつ、

グローバルなトレンドを自分の視座で解釈するというのが効果的なアプローチに感じます。

 

 

 

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~コンプライアンスとビジネスエネイブラ~

 

来年2024年4月に開催されるワシントンDCでのIAPPのサミットで、今年のメンバーでまたお話をさせていただくことが決まりました。

4月に行った私たちの発表はとても高い評価をいただいていたのでそのお陰かもしれません。

個人的には、ワシントンDCには20年来の友人も住んでいるため、こういう機会をきっかけに友人に再開できることも楽しみの一つです。

 

IAPPのサミットといえば、11月上旬にAIについてのサミットが開催されました。

AIトレーニングには2200名が参加したというので驚きです。

世界の専門家の関心の高さがうかがえます。

参加した友人は学びのあるカンファレンスだったと言っていました。

 

AIについては日本政府が非常に力を入れています。

G7広島サミットで採択された宣言へのコミットメントとしてG7でAIの開発事業者のガイドラインを作成すると公表される等、

リーダーシップを積極的に発揮しようとしている政府の取組が数多く聞こえてきます。

政府の熱量はかなり大きいようです。ただ、世界のAI政策の動向を見る際に注意しないといけないのは、基本スタンスがどこにあるかです。

日本は少子高齢化する社会への対応として積極的に利活用したいと考えていますが、

そのような喫緊の課題を持たない国々は、AIの有効利用を検討しつつも社会の安定を脅かさないことに重きを置いている傾向があります。

政策提言への影響力は強い経済力も密接に関係しています。

経済力が弱まりつつある東洋の国の日本が、世界の政策形成に影響力をどこまで保ち続けられるかは未知数です。

 

話は変わりますが、当社は11月が期の始まりです。

新しい一年に向けて様々な計画を行動に移し始める時です。

そんな時に、あるお客さまから私たちの過去の仕事が良質でとても助かったというコメントが届きました。

そのお客さまはビジネス部門の方で、間接的に私たちの仕事に触れられた方でした。

私たちの行っているコンサルティングの仕事でコンプライアンス部門以外の方から喜びのコメントをいただくことは珍しく、嬉しい時間となりました。

それと同時に、注目されなくても「当たり前のことを馬鹿になってちゃんとやる」ことを続ける重要性を再認識しました。

見ている人は見ているのだと思います。

 

今回コメントをいただいたケースは端的に言えば、

お客様のエンドユーザー様からの問い合わせに対してコンプライアンス関係の資料が整備されておりストレスなく答えることができたということでした。

コンプライアンスの仕事は「お金を生み出す仕事」を支える仕事なのだと思います。

普段の仕事で最もストレスが積もるのは「必要な情報がどこにあるのかわからない」、「必要な情報が断片化されている」という状況ではないかと思います。

こういった状況がない時に、仕事は円滑に進みます。

コンプライアンスは地味な内容が多いものの法的な義務を伴うことや契約プロセスで避けられない要素を持つため、

ビジネス部門の手を止めないことが重要です。

その意味で、良いコンプライアンス活動はビジネスエネイブラなのだと思います。

会社のビジネスを考慮して、何が必要かを想像して必要な手を打っていくという積極的な姿勢がコンプライアンスの担当者には求められます。

 

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~日EU EPA 「データの自由な流通」に関する規定~

 

▼経済産業省より

https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231028004/20231028004.html

 

10月27日にSCCsとMCCsについてのウェビナーにパネリストとして参加してきました。

内容としては越境移転についての導入のようなものでしたが、イギリス、台湾、中国、日本の専門家の経験を聞くことができる良い機会だったのではないかと思います。

越境移転に関する規制はビジネスを行う上で大きな関心の一つです。

今回のセミナーは、SCCsやMCCs、APEC CBPR/PRPといった認証は越境データ移転を促進するためのツールとして用意され、

実際に活用されていることが再確認できた時間でした。

 

そのちょうど翌日にあたる10月28日、

G7に関連した会合で経産省が外務省と「日EU EPA 「データの自由な流通」に関する規定について交渉の大筋合意が確認されました」というプレスリリースを出しました。

これは「日EU間での自由なデータ流通の原則を確認するとともに、データ流通の障壁となる措置を明確に禁止することで、企業の予見可能性を担保」することを目的としたもので、

平たく言えば、日本と欧州の間でのデータのやり取りを自由に行えるよう政治的に大筋合意した、ということです。

批准されれば、合意された条項は日EU経済連携協定に盛り込まれることとなります。

 

欧州ではデジタルユーロの導入の議論も行われており、社会のデジタル化を推進しています。

EUのプレスリリースを見ると、EU加盟国のデータエコノミーの経済価値は、2019年時点で3,250億ユーロと推定され、GDPの2.6% を占めていたそうです。

この数字は2025年までにほぼ3倍となり、GDPの5.8%に相当する約8,300億ユーロに達すると予想されていると記されています。

今回の合意は日本だけでなくインド太平洋地域を視野に入れたもので、EUは政策を通じて経済の拡張に戦略的に取り組んでいることがわかります。

プレスリリースによると、同様の合意は、今後韓国やシンガポールとも行われる予定ということです。

 

日本の提唱するDFFTも同じ文脈で生まれたものです。

日本政府にしても、世界中のデータの自由な流通は先の目標としておきつつも、

目下は経済パートナーとのデータ流通を促進しようということではないかと感じます。

その観点から言えば、日本は米国とも日米デジタル協定を通じデータ流通の担保ができていますので、

米国、欧州といった重要な貿易パートナーとの間でデータの流通をこれで確保できる見通しが立ったといってよいかもしれません。

データビジネスの立場からは非常にありがたい動きと言えるでしょう。

 

その一方でルールがなくなるわけではないことにも注意しなければなりません。

自由な流通というのは、ルールに基づいたデータの流通を指すためデータ保護の要件は今後とも重要な要素としてビジネスに組み込まれることでしょう。

組織におけるプライバシーやセキュリティの専門家の重要性は、今後さらに高まるのではないかと感じます。

 

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~情報銀行再考~

11月20日のFoundationトレーニングの実施が決定しました。

今回も対面形式でセガ様のオフィスをお借りしての実施となります。

複数の企業の方を一緒にお迎えしてのトレーニングであること、対面形式での実施だからこそできる雑談がある等、

トレーニング以外のメリットも多い場となるかと思います。

この機会にぜひ参加をご検討ください。

(お問合せはこちら info@technica-zen.com )(お申込みはこちら https://technica-zen.com/foundation-training/ )

 

本日の日本時間15:00から、シンガポール、イギリス、中国のコンサルタントと共にLinkedIn上で越境移転をテーマとした無料セミナーを行います。

私はASEANのMCCs(モデル契約条項)についてご紹介します。

日本や欧米での議論とはやや異なる角度からの議論となるため、個人的には面白い内容ではないかと思っています。

こちらもお時間の都合があえばぜひご参加ください。

(詳細はこちら https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7122090773587640320 )

 

先日参加したIGF2023で私が興味を持ったテーマの一つに情報銀行がありました。

情報銀行は数年前までスマートシティーと並んで政府が力を入れていた取組です。

最近は全く新聞の紙面を飾らなくなりましたし、取組について聞く機会も減っていたのですが、

IGFでは情報銀行をテーマとしたセッションが持たれていました。

AIについていろいろ勉強した後に改めて情報銀行のコンセプトを見ると、考え方はなかなか良いものに思えます。

 

情報銀行の出発点は、消費者のデータを企業がマネタイズしている中で消費者に十分還元がされていないという問題意識です。

改めて振り返ると、政府はデータを電気や水道のようなライフラインの一つとして位置づけたかったのではないかと感じます。

裏を返せば、それほどデータは今日重要な役割を果たしているのです。

情報銀行の取組はまだ継続されています。

認証制度も用意され粛々と進められている印象です。

とはいえ、いまのままではそれほど大きなインパクトを与える取り組みにはならないような気がします。

例えば情報銀行では生データを扱うことになっています。

大量の生データを集積することにはもちろん大きなリスクがありますので、

リスクを嫌う企業や個人は情報銀行を利用することにインセンティブを感じないかもしれません。

PETsを活用して適切な保護を施すことで安全性を高める等の対策でこういった問題は対処できるので、仕組みそのものの改善が期待されます。

この作業が迅速に進むかが一つのカギとなりそうです。

 

もう一つの問題点は、日本という国の中での取り組みでしかないという点です。

取組自体は優れていても、データは国境をまたいで世界中を移動しています。

日本という一領域でのコントロールが消費者にもたらす恩恵は限定的です。

私がそれでも情報銀行に興味を持っているのは、情報銀行のような仕組みがあればAIの学習データのベースとなり得るからです。

AIの学習データの課題の一つは、サニタイズされた信頼できるデータを集めることの困難さにあります。

政府の情報銀行が様々な国で整備されれば、ある程度信頼できる情報が集積する仕組みが生まれる可能性があります。

データの集積が行われるため、個人のコントロール権も行使しやすくなるでしょう。

国際的な枠組みの中でバイアスを除去するための配慮が統一して行われるようになれば、より確度の高いAIシステムの普及につながるのではないかと感じます。

 

日本には良いアイデアが散見されます。

こういったものをいかに実世界に普及させるかというという点に力を入れるとよい気がします。

 

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~ AIは2024年に落ち着くか ~

 

生成AIの登場で、今はデータに関する国際会議にいけばもっぱらの話題はAIのガバナンスとなっています。

AIガバナンスは最終的にはAI監査を行うこととなるため、監査法人が今後主要な役割を担っていくように思います。

先日当社でインターンをしてくれていたマークさんと話をしていると、

アメリカではAI監査を専業としたスタートアップも出てきているといっていました。

ただ、彼によるとAI監査の需要はまだ顕著にあるわけではなく、そういった会社が持続可能かは疑問だとのことです。

世界のルール作りもまだ途上のため、一部のプロアクティブな会社を除いてまだ取り組む会社は少数のようです。

 

国連の取組を見ていると、データの利活用やAIへの対策もSDGsの一つとして挙げられていました。

プライバシーガバナンスやAIガバナンスはSDGs 11 の”Sustainable Cities and Communities”等が該当するということです。

これが企業の対応へのモチベーションとなればと思います。

 

先日LinkedInのニュースフィードを見ていると、2024にAIブームに”cold rain”が訪れるかもしれないというニュースがありました。

今年に入ってから、急速に普及をしたAIですが、その運用費を企業が支えきれないのではないか、という趣旨のニュースでした。

コストをまかなうことのできるビジネスモデルへと変えていくにはもう一段生みの苦しみが必要かもしれません。

ただ、ビジネスとしては少しスピードが緩むかもしれないにしても、AIがもたらし得るリスクは失速しないでしょう。

サイバーセキュリティにおける攻撃と同様、悪意のある利用を行う人々は目的をもって攻撃を行うため、彼らにはモチベーションがあります。

そういった状況を抑制するためには、やはりサービスを提供する、もしくはサービスを二次利用する企業が対策をとる必要があります。

 

対策の一つとして挙げられているものにはコンテンツモデレーションといわれるものがあります。

これは、AIのアウトプットを人の手で調整することです。

ただ、この報道があったワシントンポストの記事( https://www.washingtonpost.com/technology/2023/10/13/ai-voice-cloning-deepfakes/ )によると、

「ソーシャルメディア企業も、人間のファクトチェッカーがフェイクを見抜くのが難しいことが多いため、AIが生成した音声をモデレートするのは難しい。

一方、不正使用を防止するガードレールを備えているソフトウェア企業はほとんどない。」

ということです。

 

私たちは本当に難しい時代を生きていると思います。

多くの人が、この問題に取り組もうとしています。

ただ、そのスピードは遅々として、技術の発展に追随できていません。

このような状況ではできることから始めないといけないことも確かです。

子どもたちの世代により良い未来を残すために、現役世代の私たちが頑張る時なのだと思います。

 

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~ データ利活用の「思いやり」と「配慮」 ~

 

最初にお知らせです。

10月27日(金)にLinkedIn上で欧州のSCCsとASEANのMCCsの比較をテーマとしたウェビナーにパネリストとして参加します。

最近は海外から声をかけていただく機会が増えていてとてもうれしく思っています。

またウェブサイト等で周知しますので、お時間が合う方はご視聴ください。

 

この原稿は、新聞でも取り上げられていた国連のインターネットガバナンスフォーラム(IGF2023)の会場で書いています。

IGFは国連の会議だけあってSDGsを軸とした議論が行われており、他の会議よりもインクルーシブ(inclusive)であることに重きが置かれている気がします。

参加者も、いわゆる「途上国」と呼ばれる国からの方が他の会議と比べてはるかに多くいます。

 

インクルーシブという言葉は日本語にしにくい言葉ですが、私は「思いやり」や「配慮」という言葉が近いのではないかと思います。

国連は、先進国の理論を取り上げるだけではなく、途上国を含めた世界全体の前進を意図しているのでしょう。

議論の複雑さは増すものの、とてもよいアプローチに感じます。

 

先進国が優れていて途上国が劣っているという見方はもちろん誤りです。

どんな国にでも優れた専門家やリーダーがいます。

IGFでも国境を越えたデータ移転を飛行機に乗ることに例えて説明していた優れた専門家がアフリカにいました。

構造的な課題が優れた専門家の活躍や途上国の発達を阻害するケースが多くみられるため、

国連はその障害をいかに取り除き、活躍すべき人や国が活躍できる環境を整えようとしているのです。

 

ところで、最近の日本は「思いやり」や「配慮」について感度が低くなっているように感じないでしょうか。

特にデータ利活用については、「利活用を推進する」という産業界と政府の号令の下、

データに付随する「人の権利」(人権)への配慮を欠いた取組が散見されるようになりました。

リクナビの内定辞退率の件もそうでしたし、最近報道された埼玉県の鷺宮中学校が行っている生徒のリアルタイムモニタリングの取組もそうです。

(後者の取組はLinkedInで紹介したところ、とても大きな反響を専門家の間でうみました。予想した通り、肯定的な意見は見られませんでした。)

データの先に「人」の顔が見えていない取組が公然と行われ実施している人がその問題に気が付いていないのみならず、

政府が法律の執行を控えることでデータ利活用の後押しを続けているという状況は心配になります。

そんな日本が国際社会でAI倫理について「人間中心のAI」(Human-centric AI)を率先して提唱してきたというのは、皮肉なことです。

 

先日、私の子どもが参加しているバスケットボールの市内大会で、あるチームが100点以上の大差をつけて相手チームを負かしたという出来事がありました。

小学生のチームの大会では高学年の選手がいるかいないかでまったく結果が変わってしまいます。

100点以上の点差をつける勝ち方はしないという暗黙のルールがあったのですが、

そのチームの指導者は「勝つこと」に重きをおいて一方的に得点を取り続けてしまったようです。

これもまた、「思いやり」や「配慮」にかけた行動です。

勝ったチームは、結果的に非難にさらされることとなりましたし、負けたチームの選手はバスケットボールへの興味を失ったかもしれません。

「勝つことが一番大切だというチームが最近増えてきて、問題になっている」と子どものバスケットチームのコーチは言っていました。

それを聞いた時、日本の今の雰囲気がここにも表れているのかもしれないと感じました。

 

「思いやり」や「配慮」にかけていることは、だれも幸せにしません。

ビジネスの現場におけるデータ利活用についても、これは同じです。

コンプライアンスやリスク評価は、「負の側面を強調する」ためのものではありません。

コミュニティが、社会が、バランスを保つために必要な「思いやり」や「配慮」を確認するための活動だということを再認識したいものです。

 

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