2023/8/17★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~インドのデータ保護法DPDPA~

 

8月9日、インドのデータ保護法であるDPDPAが成立しました。

7月にシンガポールに行った際に「8月に成立する」という話を聞いていましたが、その通りとなりました。

インドで成立した初めての個人データ保護法で、2017年に個人データ保護法の必要性が提唱され、

2022年に法案が成立目前という状況で廃案となる等、紆余曲折をへての成立です。

施行日はまだ決まっていませんが、成立したら施工まではあまり時間がないようで、

「今すぐ準備を開始するように」というメッセージが政府からは届いているといいます。

友人のインドの専門家からは、先週から今週にかけて、DPDPA対応の問い合わせが殺到しているという話もきいています。

制裁金の最高額が250 Croreルピー、すなわち25億ルピー、日本円して40億円以上と高額に設定されていることもあり、経営陣の対応へのモチベーションも高いようです。

 

DPDPAは政府に適用されず、非政府組織を対象とした法律です。

また、ハードデータについては、デジタル化されて初めて適用されます。

域外適用があり、インド国内を対象として商品サービスを提供している場合には適用を受けます。

越境移転規制は特徴的で、いわゆる「ブラックリスト規制」と呼ばれるアプローチをとっており、

中央政府が指定するブラックリスト国に対するデジタル個人データの移転を規制することとしています。

以前規定されていたデータローカライゼーションの要件はDPDPAには見当たりません。

データ処理のための法的根拠という考え方採用されておらず、原則として同意が求められます。

ただし、命の危険がある時や雇用の目的など、同意を不要とするケースについても規定されています。

同意の要件はGDPRで定められた要件を導入しており、自由 (free)、具体的 (specific)、十分な情報を与えられた (informed) 上で、

無条件 (unconditional) かつ明瞭 (unambiguous) で、明確な肯定的行動 (clear affirmative action) を伴うものでなければならないとされています。

年少者は18歳未満と高い年齢に設定されています。年少者の個人データ処理については保護者による同意が必要です。

 

個人の権利としては、修正、補完、更新、および消去の権利と同意の撤回の権利が与えられています。

 

中国法と同様、DPDPAでは重要な情報を取り扱うデータ管理者を分けて規制しています。

重要データ受託者(significant data fiduciary) と呼ばれる政府が指定する事業者は、

DPOの任命、DPIAの実施、データ監査人の任命とデータ監査の実施といった追加の要件が求められます。

 

インドではDPDPAをきっかけに個人データ保護委員会が設立されます。

データ侵害を発生した場合は、所定の書式を用いて個人データ保護委員会に通知することが求められています。

 

概観すると、制裁金の金額は高いものの、内容としては同意の取得とその管理が対応の中心となりそうです。

従業員データについては同意が不要と考えられる他、越境移転の問題も日本の場合はないと予測されるため、セキュリティ対策を十全に行うことが大切です。

DPDPAはデータ保護に関するベースラインを定めるものなりますので、今後は個人データ保護委員会が出すガイダンスをモニターすることが重要でしょう。

また、日本法をベースに個人データ保護管理を行っている企業であれば、同意管理に力を入れるとよいでしょう。

日本法をベースとしたプライバシーポリシーの運用はおそらく不十分とみなされるため、更新が必要となります。

 

GDPRをベースとした個人データ保護管理を行っている企業であれば、データ処理目録の更新と同意管理の再調整を行うことが有効です。

データ侵害の通知先と様式の整理もしておくと良いでしょう。

越境移転規制の今後については注意を払っておくことが重要です。

データガバナンスを行えるようにデータ管理の在り方を見直す必要が生じる可能性があります。

 

私は9月22日インドバンガローのknowledgeNetでインド法について、国外の専門家という立場からお話しすることとなっています。

DPDPAについてのインド専門家による解説の他、インド国外の専門家がどういう対策を行うべきかについてディスカッションを行う場所となりますのでぜひご参加ください。

 

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~タイパと農場の法則と便利なツール~

 

今年から当社ではインターンを迎え入れるようになりました。

当社には周辺業務やリサーチ業務を手伝ってもらえるという良さがあり、インターンにとっても当社の扱う最新の情報や現場の雰囲気を実感できるとともに仕事の基礎を学べるという良さがあります。

1月にはイリノイ大学からMarkさんが、6月にはプリンストン大学からYさん(日本人)が来てくれました。お二人ともとても優秀で、期待値をはるかに超える水準で助けてもらえました。

二人とも当社でのインターンを楽しんでくれたようです。

当社のスタッフも、若い方が入ってくれることで新しい風が社内に吹き、インターンのいる仕事場を楽しんでいました。

 

最近、日本の若者の間ではタイパという言葉がはやっているようです。

とにかくテンポよく次々に物事をこなし、重要なことにのみ焦点を当てるというスタイルのようです。

私が仕事について学んだ時には「農場の法則」というものを教えられ、春に種を蒔き、夏に雑草を刈り、秋に収穫し、冬に土地を休ませるというプロセスの大切さを学びました。

「当たり前のことを馬鹿になってちゃんとやる」、という当社の価値観の一つはここからきています。

「タイパ」と「農場の法則」は反対のアプローチのように思えます。

前者は大量生産大量放棄の考え方で後者は循環の考え方だからです。

今年当社に来てくれたインターンたちは、少なくとも仕事については「農場の法則」を共有できる人たちだったので、

すべての若者が「タイパ」のみを基準とし、コミュニケーションができないというわけではないと思います。

また、タイパは最新のデジタル技術に対応した生態の一側面で、人としての成熟については若者も昔若者だった人も同じ土俵で測れるような気がしています。

人として成熟している若者もいますし、人として未熟な昔若者だった人もいます。

レッテルをはって人を評価するのはよくありません。

 

タイパの若者たちが活用するのがスマホ等のデジタルツールです。

効率よく大量の情報を処理することで、回転率を高めます。

AIツールでそのスピードはさらに加速します。

スピードが速いということは悪いことではありません。

必要以上に時間がかかることには悪弊のほうが目立つため、決して褒められたものではありません。

スピードが速いことの問題は、車の教習で習うように、視野が狭くなることです。

限られた視野の中でつじつまを合わせていくことが主眼となるため、一つひとつの作業が雑にならざるを得ません。

深みが欠けてしまいます。

皮肉なことに、良い仕事は丁寧な仕事から生まれることが多いため、悪弊を取り除くつもりの高速回転は、いつの間にか品質そのものを劣化させるサイクルへと変化してしまうケースが多いのです。

また、そのような仕事をする組織は殺伐とした雰囲気になることも多い気がします。

 

デジタル社会では、個人データに限らず様々なデータをとにかく分析し、集積し、推論します。

データを応用することで新たな価値を見出すことは推奨すべきことです。

デジタル化のおかげで私たちの生活は多くの面で改善しています。

その一方で、急速に進むゆえにサイドエフェクトへのチェックが甘いことも問題となっています。

データプライバシーの問題も、AIによる偏見の問題も、急ぎすぎた故に生まれました。

振り返れば人類は、石油採掘、森林伐採、核技術の利用、灌漑、鉱物の採掘、と様々な分野で急速に技術や産業を加速し、そのバックラッシュに苦しんできています。

今年の熾烈な暑さのように体感できる段階になって、問題に気付くことが多いようにも思います。

 

あとで振り返れば、バランスをとることができる点がみつかることがあります。

先見の明のある一部の人々があらかじめ声を上げていたということもわかります。

ただ、そういった人たちは少数で、悲観的な人とみなされ、黙殺されます。

その重要性に気が付いた時には既に遅いので、対処療法に追われることになります。

 

人の営みを扱うガバナンスも似たところがあります。

ルールやプロセスがブレーキとして機能しすぎると弊害が生まれます。

その一方で、形骸化したルールやプロセスのみを採用して高速回転させると、骨密度が低いもろく危険な組織が生まれます。

私たちガバナンスの専門家は、常に先見の明があるわけではないのですが、仕事柄「坑道のオウム」のように組織の中の問題を早い段階でかぎつけ騒いで退避する(是正する)よう声を上げます。

組織がそれをくみ上げるかは組織次第です。

声を上げた場所の先に金鉱があれば、組織はそのまま前に進んでしまうこともありますし、金鉱とは別の価値観を持つ組織であれば、そこでとどまり、別の道を探ります。

 

ガバナンスを仕事にするということは、こういった人間的な側面を理解した上で仕事を行うということだと思います。

タイパも大切、農場の法則も大切、便利なツールは使うべき、だけど後で後悔しないようにしたい。

その時、何を選べるか、何を選ばないかが、ガバナンスの専門家としての腕の見せ所ではないかなと思います。

 

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~IAPPのAPF23のご報告~

 

今年もシンガポールでIAPPの主催するAsia Privacy Forumが開催されました。

毎年7月、アジア全域からプライバシーの専門家が集まる貴重な機会です。

IAPPが毎年ワシントンで開催しているサミットほどは大規模ではなく、その分参加者同士が交流する機会も恵まれています。

私はシンガポールの会の距離感が気に入っていますので、毎年楽しみにしています。

 

今年はパネルディスカッションのパネリストとして話をする機会もいただけました。

プライバシーツールを利用する時の検討事項について話をするというものでした。

シンガポール、フィリピン、日本と、異なる視点からツールを導入する時に考えるべきことをディスカッションし、概ね好評だったようです。

シンガポールのパネリストはROIが重要と言い、フィリピンのパネリストはコストが重要と言い、私は「使いこなせるかどうか」が重要と言い、国によって重きの置く場所が異なるところが私は面白かったです。

 

今年はやはり、AIの話が多く取り上げられていました。

私はG7やEU、OECDが先導する取り組みを追うことが多かったので、特にシンガポールをはじめとするアジア各国の取り組みを知ることができたのが収穫でした。

シンガポールは日本と同様、法律を定めてレッドラインを明示するハードローではなくアジャイルなソフトローアプローチを検討しているようです。

ソフトローアプローチというのは、当局がガイダンスを出し、産業界が自らルールを形成することで産業の発展を妨げない形で新技術をコントロールする方法です。

少しずつ議論は煮詰まりつつあるので、ハイレベルなポリシーとしての法整備と方針は少しずつ固まってくるのではないかと感じています。

 

その他、データ越境移転についての議論も行われました。

IAPPのイベントと同時開催されていたPDPCウィークでは、様々な規制当局や国際組織が提供する越境移転ツールをどう考え、どう活用すべきかについての議論もされていて面白かったです。

もちろん明確な指針が出るわけではないですが、「ツールがある」ことを出発点としてこの困難な時代を進む必要があるということは確認できました。

とはいえ、本質的に何かが解決されているわけではありません。

データの移転については延々とジレンマを抱えながら進むしかないように思えます。

 

今回のAPFでも多くの出会いがありました。

私たちプライバシーの専門家はLinkedInを通じてつながっています。

国際会議は「あなたがあの〇〇ですね!」という出会いの連続でもあり、これも楽しいところの一つです。

今回も、インド、アメリカ、フィリピン、タイと、いろいろな国のLinkedIn仲間とお会いでき、楽しい時間を過ごせました。

 

実は今回はパネリストが友人であったこともあり、パネルディスカッションの当日私の誕生日を祝ってくれました。

友人たちの計らいのお陰で会場にいた方が誕生日の歌を歌い、壇上でケーキのろうそくを消すというお祝いもしていただけるという特別な時間をプレゼントしてもらいました。

お祝いしていただきながら私が感じたのは、この瞬間は私の誕生日を祝っているのではなく、プライバシーの専門家たちの連帯を祝っているのだということです。

イベントを通じ、私たちはともにこの新しい分野で、専門家としてすべきことを悩み、迷いながら助け合う、そういう存在だということを確認したと思っています。

プライバシーの仲間は、インクルーシブでお互いをケアし、プライドをもって仕事をしている方がたくさんいます。

データを扱う難しさが、コミュニティのつながりの深さを育んでいるようにも感じます。

 

会議の2日目、古くからのプライバシーの専門家4人で話をしているときに、一人の専門家が「最近はプライバシーのコースが大学にできているそうだよ」と言っていました。

あと数年すると、大学でプライバシーを学んでいましたという優秀な若い人に出会える日が来るのかもしれません。

 

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