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2025/5/30<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【個人情報保護法改正の延期】

日本の個人情報保護委員会が通常国会で提出予定だった3年ごとの見直し案の提出を見送ることとなりました。改正に向けた意見集約のプロセスを見ているとポイントがうまく絞れていない雰囲気があったので、延期になったこと自体は自然な成行きのように感じます。その一方で、今回の見送りはいろいろな意味で残念でした。

 まず、日本経済新聞ではデジタル相の談話として報道されていた点です。なぜ、個人情報保護委員会の発表として公表されないのでしょうか。独立した当局として発表が行えないようでは監督機関としてすこし心もとないです。

 個人情報保護委員会は内閣府の外郭団体であることを考えると、デジタル相がコメントしていることについても「なぜ?」と思いました。デジタル庁は個人情報保護法を管轄するわけではないのですから、政府内でのガバナンスに対する不安を感じさせます。(私の認識が間違っているのでしたらどなたかご教授お願いします。) もしデジタル相がコメントすることが適切なのであれば、デジタル庁と個人情報保護との関係性について国民が理解できる形で役割を明確化してもらいたいところです。

 「企業への課徴金制度の導入」に対しての調整が難航した、という点も当局と企業との間の緊張感の感じられない関係を伺わせ、監督が適切に行われるのか心配になります。データ保護の現場でしばしば聞かれる「日本は緩いから心配していない」という声は、裏を返せば日本の個人情報保護についてはそれほど力を注ぐ必要がない、というメッセージです。国民としては権利をないがしろにされているわけなのですから、ある意味危険な状態にも感じられます。

 では、日本の政府が無能かといえば、そういうわけでもないと思います。個人情報保護委員会で議論されている内容はグローバルな観点からも遜色のないものですし、俯瞰的かつ先見の明のある議論も数多くされています。委員会の中では高いコンセンサスが形成されていて、委員会と密に連絡をしている人たちにはコンセンサスが共有されているのでしょう。ただ、このような在り方は「閉鎖的」とみられても仕方ないですし、「透明性」や「ガバナンス」の重要性を議論するのであれば、情報公開の在り方も変えていく必要があるように思います。

 改正を急ぐ必要はありませんが、改正しない理由についての透明性と納得感を高めていただければと思いました。

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2025/5/14<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【GPS25と米国の様子】

気が付けば5月の連休も終わり、5月も中旬を迎えました。春から初夏に向けてゆっくりと季節が動いています。今年の連休にはCAIDPPresidentMerveさんが夫婦で遊びに来てくれて、楽しい時間を過ごすことができました。ご主人のMichaelさんも以前日本の企業と仕事をしていたことがあり、Merveさんの日本での調査の話や日本企業との仕事の思い出で盛り上がりました。Merveさんの調査はいったん5月中旬で完了となり、米国に戻られます。当社のお客様にも何社か調査に協力していただき、ありがとうございました。最終的には65社もの会社がインタビューに応じてくださったということで、実りある時間になったようでした。インタビューの結果は彼女の新しい 本で紹介することになるそうです。本といえば、MerveさんとはAIについての英語の本をぜひ共著しましょうと話しています。私の初めての英語の本がうまくいくと出るかもしれません。

 連休前にはワシントンD.C. で開催されたIAPPGPS25に参加してきました。以前からの友人に数多く会うことができたほか、日本からも世界一周中のアンダーソン毛利友常弁護士事務所の井上先生に思いがけずお会いするなど、面白い時間でした。GPS25ではパネリストとしてアジアのデータ保護の概要を紹介するセッションで話をさせてもらったのですが、おおむねよい感想をいただいて安心しています。GPS25には韓国の個人情報保護委員会のKo委員長もきて積極的に発表をされていました。委員長が自分の言葉でデータ保護について話す姿は頼もしいものがありました。

 CIPMBojanaさんにも再会し、日本でのイベントを考えているということでした。私もその開催をお手伝いさせていただく仲間に入れてもらえるようなので、また時期が近付いたらお知らせしたいと思っています。

 アメリカは、トランプ政権になってからいろいろ大きな変化が起きているようでした。移民政策の一環で外国居住者に許可証を常に持つような命令が出されるなど、ナチスドイツ下の政策を彷彿させる出来事も起きていて少し驚きました。そのニュースを知ったのがシンガポールの友人のDarrenがホロコーストミュージアムのチケットを予約してくれて一緒に見に行った後だっただけに、少しいやな気持になりました。トランプ政権は始動後100日を経て相変わらず軋轢をたくさん産んでいますが、貿易戦争では旗色が悪そうです。そのほかの政策も無理があるものにはほころびが見えてきそうな気配です。何事も筋が通らないことは長いこと続かないということではな いかと思います。その一方で、トランプ政権が露呈したほころびによって世の中の前提も当然変わるので、今後の動向は気になります。

 米国から戻って感じたのは、日本はまだいい国だ、ということです。ほころびが目立つようになっていますが、国民が暮らしやすく、安心して過ごせる環境が残っています。これは、ひとえに戦後の人々が国を立て直す中で模索してきた結果なのだと思います。もちろん悪いところもたくさんありましたが、よい部分を日本として残していくといいと思いました。米国が減速し、欧州も制度疲弊を見せる中、日本としてのスタンスを世界に通用する形で示せるといいなと思います。

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2025/4/18<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【DPFの行方】

10年ほど前のことでした。
「グローバル化した今の時代に、第二次世界大戦のような戦争はもう起こらない」と、私はある人からそう教えられました。確かにそうかもしれない、と当時は思っていました。

ところが今、現実は私たちの想像を裏切っています。ロシアがウクライナに軍事侵攻し、アメリカではトランプ氏が主導する“貿易戦争”が展開されています。
会社経営をしているとよく感じるのですが「まさか」と思うような出来事は、時に本当に起きてしまうものです。だからこそ、私たちは知恵を絞り、冷静に、そして柔軟に乗り越えていかなければなりません。

さて、プライバシーの分野でも気になる動きが起きています。
米国とEU間のデータ移転を合法化する枠組みである DPF (Data Privacy Framework) には、「政府による監視が、プライバシーや市民的自由ときちんとバランスが取れているかを監視する」役割を担う Privacy and Civil Liberties Oversight Board (PCLOB) という独立機関があります。

ところがトランプ氏は最近、このPCLOBに所属する民主党員3名を解任しました。もともと欠員が1名あったため、現在この委員会にはたった1名しか残っていません。超党派の複数名で構成されるべきと法律で定められている委員会が、実質的に機能していないという異常事態です。

この事態を受け、欧州の一部の専門家の間では「DPFの十分性認定を再検討すべきではないか」という声が上がり始めています。
現時点では、米国との越境データ移転を行う企業にとって、DPFよりも SCC (標準契約条項) を利用するほうがリスクが少ないといえるでしょう。

私自身、今の米国の政権には大きな懸念を抱いています。
人権を尊重する姿勢や法を守る意識が、ここまで低下してしまっているとは…。私たちプライバシーやガバナンスの専門家にとって、非常に困難な状況です。なぜなら、私たちが大切にしてきた価値観そのものが、いま世界で最も影響力のある国のリーダーによって次々に否定されてしまっているからです。

ただ、決して諦めてはいけません。
トランプ氏の行動に疑問を持ち、問題視している人はアメリカ国内にも多くいます。
ブラック企業で働くのが敬遠されるように、誰も「暴君」の下で働きたいとは思わないのです。

だからこそ、私たちにできることがあると信じています。
それは、どんな時代にあっても倫理と人間の尊厳を大切にする企業文化を支えることです。荒波のような社会情勢の中で、普遍的な価値を守り続ける姿勢は、私たち自身の誇りにつながります。そしてその誇りが、組織を強くするのではないでしょうか。

私たちは、ただ世の流れに流される存在ではありません。
むしろ、自分たちが望む社会のかたちを、日々の仕事を通じてつくっていく担い手なのです。
そんな想いで、皆さんも一歩一歩、お仕事に励んでいただきたいと思います。

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