【個人情報保護法改正の延期】
日本の個人情報保護委員会が通常国会で提出予定だった3年ごとの見直し案の提出を見送ることとなりました。改正に向けた意見集約のプロセスを見ているとポイントがうまく絞れていない雰囲気があったので、延期になったこと自体は自然な成行きのように感じます。その一方で、今回の見送りはいろいろな意味で残念でした。
まず、日本経済新聞ではデジタル相の談話として報道されていた点です。なぜ、個人情報保護委員会の発表として公表されないのでしょうか。独立した当局として発表が行えないようでは監督機関としてすこし心もとないです。
個人情報保護委員会は内閣府の外郭団体であることを考えると、デジタル相がコメントしていることについても「なぜ?」と思いました。デジタル庁は個人情報保護法を管轄するわけではないのですから、政府内でのガバナンスに対する不安を感じさせます。(私の認識が間違っているのでしたらどなたかご教授お願いします。) もしデジタル相がコメントすることが適切なのであれば、デジタル庁と個人情報保護との関係性について国民が理解できる形で役割を明確化してもらいたいところです。
「企業への課徴金制度の導入」に対しての調整が難航した、という点も当局と企業との間の緊張感の感じられない関係を伺わせ、監督が適切に行われるのか心配になります。データ保護の現場でしばしば聞かれる「日本は緩いから心配していない」という声は、裏を返せば日本の個人情報保護についてはそれほど力を注ぐ必要がない、というメッセージです。国民としては権利をないがしろにされているわけなのですから、ある意味危険な状態にも感じられます。
では、日本の政府が無能かといえば、そういうわけでもないと思います。個人情報保護委員会で議論されている内容はグローバルな観点からも遜色のないものですし、俯瞰的かつ先見の明のある議論も数多くされています。委員会の中では高いコンセンサスが形成されていて、委員会と密に連絡をしている人たちにはコンセンサスが共有されているのでしょう。ただ、このような在り方は「閉鎖的」とみられても仕方ないですし、「透明性」や「ガバナンス」の重要性を議論するのであれば、情報公開の在り方も変えていく必要があるように思います。
改正を急ぐ必要はありませんが、改正しない理由についての透明性と納得感を高めていただければと思いました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
≪当社無料メールマガジンのご案内≫
▼メルマガ登録はこちら
https://m.technica-zen.com/ms/form_if.cgi?id=fm
・週1回の配信で、重要トピックや最新ニュース等の情報をお届けしています。
・上記のような当社コンサルタントの専門的視点で注目する、最新ニュースや動向等を読んでいただけます。
・配信不要な場合はメルマガ最下段にてワンクリック解除が可能です。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆