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【読み物】プライバシーと倫理(再論)

次回の東京でのknowledgeNetは12月19日です。勉強会と忘年会を兼ねて実施しますのでぜひご参加ください。

12月19日(木) 17:30集合 忘年会会場へは18時に移動

<トピック>

  • how to ensure the necessary staff and budgets for privacy operations (プライバシーに関連する予算確保の方法)
  • principles of governance for privacy compliance in global organizations (グローバルな組織でのプライバシー・ガバナンス)
  • how to collect the latest privacy information (最新情報の収集方法)

テクニカ・ゼン株式会社では会員制データ・プライバシー情報サイトを開始しました。こちらの有用情報で記事を更新していますので、ぜひ、ご訪問・ご登録ください。

リクナビへの個人情報保護委員会の措置はわりと大きな反響を日本社会に与えたようです。2020年の個人情報保護法が厳格化の道へと舵をきったのも、リクナビ問題が原因です。その意味では私は良かったなと思っています。

日本はデータ利活用に力を入れすぎてきました。理由は簡単で、これまで世界での競争力を維持するために伸ばした機械産業が急速に時代に取り残されつつあるからです。無くなることはないでしょうが、今後はかつての鉄鋼業のような存在へと変わっていくことが目に見えています。

今は、データの時代です。データをいかに活用して、マネタイズするかが世界の競争を勝ち抜くためのもっとも重要な点だ、というのが霞が関の思惑なのでしょう。霞が関が主導したことは、原発の輸出、クール・ジャパン、ジャパン・ディスプレイ、宇宙産業、農業投資、MRJ…と、このところすべて裏目に出ています。おそらく腰の据わらない取り組みなのでしょう。金さえ費やせば結果がついてくるという、時代遅れな考え方をしているのかもしれません。

リクナビ後、事件発生後5か月(!)たってようやく倫理について語る論調がメディアに出てきました。今更なにを論じているのだろう、というのが私の感想ですが、(私は発生直後からずっとこれは倫理の問題だと言っていました)これとて本当に倫理について検討するということは、今のこの国のビジネスマンにはなかなかできないでしょう。

日本の大企業のサラリーマンで事業企画をしている人たちは少しお金を追いかけすぎています。FacebookやGoogleが急速に伸びたのは、新興企業として急速な成長を義務付けられる中でやみくもに動いた結果のデータ活用だであり、首を切られる心配もなく、何も失うものがない中で「挑戦」するのとは進む方向がずれるのも仕方ないのかもしれません。

要は、ビジョンに基づいて動いているのか、評価を求めて動いているのかの違いなのでしょう。守られた環境で生きていると、給与が10分の1になっても取り組んでやろうという気概はなかなか生まれません。給与が10分の1になっても取り組むことができるのは、その取り組む内容に本当に意味を見出しているからです。

私はデータの利活用はとても大切だと感じます。

しかしデータの利活用を行う前に、データの裏にいる人を見つめる力が要ります。従業員を私物のように扱って、挙句の果てに過労死に追い込んでいる環境を放置する経営層には、この視点が欠けています。従業員とて一個人であり、働く従業員が働くことに喜びを見出せる環境を整えられることができないのであれば、データの利活用はうまくいかないでしょう。

データ・プライバシーとは倫理の問題です。そのことを、本当に考えて、良いサービスを社会に還元していただきたいと思います。