~バランスを忘れないで~
ここ1週間は、トランプ前大統領の暗殺未遂、クラウドストライクが原因となったシステム障害、バイデン大統領の大統領選撤退と大きなニュースが続きました。
灼熱の暑さの中、こういったニュースに触れるのは気持ちの良いことではありません。
少し前まではそこにあると思っていた「秩序」が次々に消えていくような感覚もあります。
変化は必然ですが、「善い方向にむかっている」と感じている人は少ないのではないでしょうか。
エントロピーが増大するように、これまで社会をつなげていた何かが次々にちぎれてはなればなれになっている、という感覚です。
今回のシンガポールの滞在最終日、7月18日にCIPLが主催した”The GDPR’s First Six Years”と銘打ったパネルディスカッションに呼んでいただきました。
Global CBPR Forumでご一緒した古い友人のBojanaさんが誘ってくれて偶然参加できたのですが、今回のシンガポール出張で一番よいセッションだったと思います。
内容は、GDPRが施行され6年たち私たちの社会にどのような影響を与えたかを振り返るというものでした。
興味のある方は以下のリンクからぜひ読んでください。
www.informationpolicycentre.com/uploads/5/7/1/0/57104281/gdpr_six_years_on_cipl_may24.pdf
パネリストはMeta社やGoogle社、イギリスの大学教授とデータプライバシーの最先端を行く人々でした。
面白いと思った指摘は、GDPRを通じてデータ保護が何にもまして重要という扱われ方をするようになったという指摘です。
データ保護とは他の権利とのバランスの中で保護するものであり、他の権利に優越するものではありません。
それが、あたかも絶対的な権利のように扱われ、権利を主張する個人が猛威を振るう状況が生まれている、という観察が行われていました。
その結果、当局は膨大な苦情に圧迫され、リソース不足に苦しみ、社会の非効率化とデータ保護の機能不全を招いているという意見です。
SNSが発達し、かつてないレベルで個人の意見が「聞かれる」状況がうまれ、多くの個人がその状況を享受するようになりました。
作られた当初に込められた法律の裏にある善意が忘れられ、「主張」し、「正義」を振りかざす人が増えているのは確かなようです。
責任を伴わない自由、というのでしょうか。
皮肉なことに、「正義」のために立ち上がった個人が社会の非効率化を招き、最終的に「不正義」を生み自身が不利益を受ける状態を生み出してしまっています。
権利というのはつくづく諸刃の刃だと思います。
上手に扱えない人が振り回すと困る人が増えるからです。
実は、今回の旅では別件でも権利を振り回すことで周囲が困ってしまうという状況に対処しなければならないという話を友人から聞かされていたところでした。
権利には責任が伴うもので、自らの主張を押し通し続けていたらやりたい放題できるということにはならないことを再認識しなければならない時がやがて来ると思います。
トランプ前大統領の駆け引きや「告発系」YouTuber、「迷惑系」YouTuberたちの姿に悪い例を見た人は多くいるはずです。
社会の一員として、どのような社会を形作るのかを考えて選択をしていきたいものです。
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