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~Take It Down~
6月15日の朝日新聞に「性的な自撮り画像拡散させない 新たな仕組み日本でも スマホで申請」というタイトルの記事が掲載されていました。
これは、”Take It Down” ( https://takeitdown.ncmec.org ) というプラットフォームについての記事で、
米国のNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター、National Center for Missing & Exploited Children)が開発したものです。
NCMECは1984年に設立された米国の非営利団体で、
行方不明になった子どもや性的に搾取された子どもの問題に対する米国の情報センターとしての役割を果たしています。
このメルマガでも以前、”I am Jane Doe” ( https://www.iamjanedoefilm.com ) という米国における子どもの誘拐と子どもの売春を追ったドキュメンタリーで紹介しました。
NCMECは”Take It Down”の公開以前の1998年から”CyberTipline” ( https://www.missingkids.org/gethelpnow/cybertipline ) という仕組みを構築し、
Child Sexual Abuse Material(児童性的虐待のコンテンツ、CSAM)を通報し、撲滅するために取り組んできました。
現在、米国は連邦法でテクノロジー企業が自社のシステム上でCSAMを発見した場合、CyberTipline に報告することを義務付けています。
CyberTiplineができた当初は一般市民からの通報が週に100件を超える程度であったそうですが、
テクノロジー企業による報告が義務付けられてから報告の数は急増し、2023年にはなんと3,620万件もの報告が行われています。
性的な自撮り画像(explicit image)の拡散は以前からよく知られた問題の一つです。
その多くは自発的に撮影し、親密な相手と共有されます。
”Take It Down”では、18歳未満の時に自分が(または自分が所有するデバイスで)撮影して共有してしまった自撮り画像がオンラインで共有されてしまった場合やその恐れがある場合に、
それらの画像が一部のプラットフォーム上(この仕組みに加盟している企業( https://takeitdown.ncmec.org/ja/加盟企業/ ))で表示されないようにすることができる仕組みです。
報告する際、自撮り画像をNCMECと共有する必要はなく、ハッシュ化された情報のみがNCMECに共有されるため、
匿名で申請が行うことができ、申請者のプライバシーも保護されます。
“Take It Down”は万能ではありません。
自分の手元にあるデバイスに存在する画像についてしか申請できないため自分以外の誰かが撮影した画像については対象外となってしまうこと、
表示を防止できるプラットフォームが加盟企業のみと限定的であること、
暗号化されたプラットフォームで公開されている画像については対応ができない、といった制約があります。
それでもなお、画像の拡散に対して多少なりともコントロール可能となったことは善いニュースだといって良いでしょう。
ところで、私はこのニュースを「米国はしっかり取り組んでいるな」と他人事で済ましてほしくないと思います。
米国で26年も以前から資金を投じる価値があると考えられ取り組まれたことが、日本では放置され今に至っているという事実は、
この分野における脆弱な立場の人たちに対する日本社会の視線の冷たさの現れと言えないでしょうか。
以前紹介した”I am Jane Doe”というドキュメンタリーは次の質問で締めくくられています。
”Is this the world you want to live in?” (これは、あなたが住みたいと思う世界ですか?)
経済活動はもちろん安定と平和のために重要です。
しかし、私たち個人は経済活動の「駒」ではありません。
責任と自発性をもって結果を選択する存在です。
社会の「無関心」を修正するには「関心」を持つことしか方法はありません。
「関心」を持ち、学んだことを身近な人に共有する人が少しずつでも増えてくれたらと願っています。
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