2025/3/21<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【民主主義が終わる時】

アメリカのトランプ大統領の振る舞いを見ていると、一つの時代が終わりに近づいているような気持になります。司法の判断を政府が無視するようになると、憲法は有名無実化します。その一線を超えようとしているアメリカは、急に危うい国にかわってしまいました。

 日本でも不可解な政治家が増え始めているので、一部の横暴な人々が社会を乗っ取ろうとする動きはアメリカだけではないようです。

 だれもが「ぶっ壊す」ことばかりを声高に唱えて、希望ある「創造する」絵を描けないというのは何とも寂しいことだと思います。「ぶっ壊す」動きを止めることができない他の政治家も社会も、制度も、疲弊しているのでしょう。
当社が取り組んでいるプライバシーやAIガバナンスは民主主義と密接にかかわっています。欧州GDPRは基本的な人権を擁護する「民主主義」社会を実現するためのものとして生まれた法律ですし、AIガバナンスも少数派が多数派の暴力から保護されることを念頭においた活動という側面が多分にあります。
今の社会的なトレンドは、プライバシーガバナンスやAIガバナンスの希求する方向性とは反対の方向に進んでいます。最近は私も「権利と自由を守る」ということを以前ほど無邪気に人に伝えることができなくなってきました。理念としてのプライバシーやAIガバナンスは今、とても苦しい状態です。

では、プライバシーやAIガバナンスは今後廃れるのでしょうか?
面倒なプロセスを増やしコストばかりかかるこれらのガバナンスに関する活動は「なくなってくれたらいいのに」と多くのビジネスパーソンに願われているものであることは確かです。その一方で、「プライバシー」や「不当な扱いを受けたくない」という人の思いは現代の人々の深い部分に根差した感情でもあります。そう考えると、制度としては力を弱めることがあるかもしれませんが、当面は「ないこと」にすることができるものではないようにも感じます。セミナーや講演で、私はよく「同じことをあなたがされたらどうでしょうか?あなたの大切な人がその対象となることに耐えられますか?」と尋ねます。「違和感」を感じるようであれば、検討している活動は控えたほうが良いと思われます。「一時的な痛みに過ぎない」だとか、「新たな技術が欠陥を取り返す」だとか、いろいろな説得が行われるでしょうが、当事者意識を失わずに判断を続けることが大切です。
 科学哲学者のトマス・クーンは、パラダイムシフトが発生してもそれまで信じていたすべてが「なかったことになるわけではない」と言っています。一つの時代が終わり、混乱を経て新たな時代に向かっているとしても、私たちの日常は続きますし、人は、朝起きて、ご飯を食べて、働いて、憩い、休み、眠り、そして死んでいきます。

 流転する人間の営みにあって、奥底にある変わらないものに、プライバシーやAIガバナンスが実現しようとしているものが含まれていると私は感じています。だから、変化の時こそプライバシーの専門家が増えることが大切だと思うのです。

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2025/3/3<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

【客観性信奉やデータ依存への警鐘】

気が付けばプロ野球のオープン戦が始まる時期になっていました。この時期に甲子園球場の外野席からみる試合はとても寒いのですが、キャンプ明けのチームの仕上がりを見るのは期待感もあいまって楽しいものです。

 今年は野球の話題が面白い年です。大谷選手は再び投手と打者の二刀流に戻るようですし、イチロー選手が米国で野球殿堂入りするという偉業を成し遂げました。「能力が10だとすれば、10にかなり近いところまで引き出すことができる」と自分を評するイチロー選手であれば、当然の成り行きなのでしょうが、一ファンとしてはとてもうれしい出来事でした。ちなみに、イチロー選手によると、松井秀喜は「6とか7」までしか引き出していなかったそうです。それでもあれだけの活躍をした松井選手もおそるべきものです。

 私は以前からイチロー選手を追ったインタビュー番組や記事が好きでよく見、読んでいました。殿堂入りを記念したインタビューで、彼は「すべての練習、プレーには理由があります。現代ならデータが示す道に乗っていくのは楽だとは思いますが、それが全てなはずはないと考える。そうやって常に多くの人が信じているものに疑問をもってやってきたんですよね。」と言っています。あれだけの結果を残した人がいう言葉だけに、迫力を感じます。イチロー選手は今の野球を「データに囚われ過ぎている」と表現しています。「数値化された目に見えるデータで評価する人たちは、ピッチャーの投げるボールが何マイル以上なら何%の割合でヒットが出る、何 マイル以下ならこうなる、と決めつけてしまう。でも、そういったデータ上はヒットにできないはずのボールでも、ヒットにする技術はあるんです。そういう野球をするためには、数字を参考にしても鵜呑みにしてはいけない。感じること、考えることをやめてはいけません」

 ビジネスやディスカッションの場でも「客観性」や「数字」が重視されます。それでも、超優秀なはずのMBA卒業生がかならず成績に応じた企業を作ることができないように、「客観性」や「数字」では表せないものもあるような気がします。本田宗一郎さんや松下幸之助さんのような、型破りな創業者が人を惹きつけるのも、「感性」がそこにあるからなのかな、と考えさせられました。

 イチロー選手は殿堂入りを果たした際に「残念なこととしては、見ている人たちの感情が奪われているシーンも多いと思います。感情を表したいのに、例えば申告敬遠で投げないで一塁に歩いていくというのは、次のネクストサークルの選手がドキドキしたり、球場全体がザワザワと雰囲気が変わったり、そういう感情がなくなってしまった」と話したそうです。そういう人間の感情の動きがドラマを生み、思ってもいなかった結果を生むからこそ、面白い。データ全盛の現代にあって、選挙に勝つためにデータを活用し、売上を最大化するためにデータを活用し、とデータに依存することがますます増えている私たちに対しても、イチロー選手の言葉は警鐘を鳴 らしているようにも感じます。

 データを活用するのであれば、「感性」も生まれる形で活用するようにしたいものだと思います。

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