2024/6/28<テクニカ・ゼン>CEO寺川貴也が注目するNEWS TOPIC

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~自動運転、LLM、新技術~

 

先週の土曜日、8年間乗った車に別れを告げ、7カ月待って納車された車に乗り換えました。

さっそくドライブに出て新しい技術を堪能しました。

機能を学ぶには、体験に勝るものはありません。

 

今回特に印象に残ったのが、クルーズコントロール技術の進化です。

8年も経つとここまで進むのだ、と納得しました。

8年の間に、スピードを一定に保つだけではなく車間距離を調整しさらにハンドル操作まで補助するようになっていました。

ハンドル操作についてはほぼ手を添えるだけであえてコントロールする必要がないほどの精度となっています。

下手に私が運転するよりも安全だと感じるレベルです。

自動運転はもうすぐそこまで来ているのではないかとワクワクしました。

 

仕事柄自動運転については技術を追いかけていましたが、体感すると印象が大きく変わります。

リスクの仕事をしていると、インシデント情報に触れることが多いというのが正直なところです。

しかし、リスクの専門家こそ新技術の光の側面に意識的に触れなければいけない、と思いを新たにしました。

 

似たような体験はLLM技術に触れたときにも感じました。

文章の要約、資料の下調べ、OCR、簡単なコーディング、自社ツールの開発、描画など、

いろいろ試してみるとこの技術がブレークスルーであることを改めて体感できます。

私たちは、新技術に「ついて」話をするのではなく、新技術を「使って」話をしなければならないと思います。

 

先ほどの新しい車の話に戻ると、今回搭載されているナビゲーションシステムでは、

道案内と併せて近くのおすすめスポットや新着情報の紹介等もされるようになっています。

これはロケーションベースのレコメンデーション技術やプロファイリング技術を使ったものです。

一般的な消費者と同様、プライバシーポリシーに盲目的に同意した私は、

期せずしてロケーションベースの技術を「この技術は有用だろうか」という観点から考えるきっかけをもらいました。

 

レコメンデーションは確かに便利ですが、「考えない」でよいため「受け身」で情報を吸収するというデメリットもあります。

プライバシーでもいわれるように、人はある程度「コントロール」できることを喜びます。

ナビの機能については、音声認識技術を搭載してもっとインタラクティブにコントロールできるとさらに面白くなるのではないか、と感じました。

 

私はよく、コンプライアンスは車のブレーキのようなもの、と紹介しています。

ブレーキばかり踏んでいれば、車は前に進みません。

アクセルを踏むからこそ車は進むのです。

リスクを考えるコンプライアンスの専門家がすべきことは、車を停止したままにするのではなく、事故が起こらないように律速できるようにすることです。

新技術は、見たことがない、または知見の少ない領域故に、慎重になりがちです。

そんな時は、ぜひ一度使ってみてその可能性を感じてみると良いと思います。

そして、可能性を感じるツールであるのなら、それを活かすためにリスクの知識を使えば良いのです。

新しいものは、やはり触ってみるのがいい、というのが今回の経験で私が感じたことでした。

 

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~Take It Down~

 

6月15日の朝日新聞に「性的な自撮り画像拡散させない 新たな仕組み日本でも スマホで申請」というタイトルの記事が掲載されていました。

これは、”Take It Down” ( https://takeitdown.ncmec.org ) というプラットフォームについての記事で、

米国のNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター、National Center for Missing & Exploited Children)が開発したものです。

 

NCMECは1984年に設立された米国の非営利団体で、

行方不明になった子どもや性的に搾取された子どもの問題に対する米国の情報センターとしての役割を果たしています。

このメルマガでも以前、”I am Jane Doe” ( https://www.iamjanedoefilm.com ) という米国における子どもの誘拐と子どもの売春を追ったドキュメンタリーで紹介しました。

 

NCMECは”Take It Down”の公開以前の1998年から”CyberTipline” ( https://www.missingkids.org/gethelpnow/cybertipline ) という仕組みを構築し、

Child Sexual Abuse Material(児童性的虐待のコンテンツ、CSAM)を通報し、撲滅するために取り組んできました。

現在、米国は連邦法でテクノロジー企業が自社のシステム上でCSAMを発見した場合、CyberTipline に報告することを義務付けています。

CyberTiplineができた当初は一般市民からの通報が週に100件を超える程度であったそうですが、

テクノロジー企業による報告が義務付けられてから報告の数は急増し、2023年にはなんと3,620万件もの報告が行われています。

 

性的な自撮り画像(explicit image)の拡散は以前からよく知られた問題の一つです。

その多くは自発的に撮影し、親密な相手と共有されます。

”Take It Down”では、18歳未満の時に自分が(または自分が所有するデバイスで)撮影して共有してしまった自撮り画像がオンラインで共有されてしまった場合やその恐れがある場合に、

それらの画像が一部のプラットフォーム上(この仕組みに加盟している企業( https://takeitdown.ncmec.org/ja/加盟企業/ ))で表示されないようにすることができる仕組みです。

報告する際、自撮り画像をNCMECと共有する必要はなく、ハッシュ化された情報のみがNCMECに共有されるため、

匿名で申請が行うことができ、申請者のプライバシーも保護されます。

 

“Take It Down”は万能ではありません。

自分の手元にあるデバイスに存在する画像についてしか申請できないため自分以外の誰かが撮影した画像については対象外となってしまうこと、

表示を防止できるプラットフォームが加盟企業のみと限定的であること、

暗号化されたプラットフォームで公開されている画像については対応ができない、といった制約があります。

それでもなお、画像の拡散に対して多少なりともコントロール可能となったことは善いニュースだといって良いでしょう。

 

ところで、私はこのニュースを「米国はしっかり取り組んでいるな」と他人事で済ましてほしくないと思います。

米国で26年も以前から資金を投じる価値があると考えられ取り組まれたことが、日本では放置され今に至っているという事実は、

この分野における脆弱な立場の人たちに対する日本社会の視線の冷たさの現れと言えないでしょうか。

 

以前紹介した”I am Jane Doe”というドキュメンタリーは次の質問で締めくくられています。

 

”Is this the world you want to live in?” (これは、あなたが住みたいと思う世界ですか?)

 

経済活動はもちろん安定と平和のために重要です。

しかし、私たち個人は経済活動の「駒」ではありません。

責任と自発性をもって結果を選択する存在です。

社会の「無関心」を修正するには「関心」を持つことしか方法はありません。

「関心」を持ち、学んだことを身近な人に共有する人が少しずつでも増えてくれたらと願っています。

 

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~限りなく赤信号に近い~

 

5月の末から負けが続いていた阪神タイガースがようやく息を吹き返してきてほっとする日々です。

沈黙していた打線もようやく2点以上の点数をとることができるようになりはじめ、堅調な投手陣を少しずつ援護できるようになってきました。

8月になり京セラドームに移らなければならなくなる前に、去年の強い阪神に早く戻ってもらいたいと願うばかりです。(阪神ファンではない読者の方、ごめんなさい!)

 

最近は野球ファンも随分減ってきましたが、当社では今年から年間シートを取って、お付き合いのある方々やスタッフにお配りしています。

配ってみて気付いたのですが、阪神戦のチケットは関西では最も喜ばれるノベルティでした。

もっとも、最近は大手企業でも利益供与や贈賄に近いととられてお客様への配布は止めるところが増えていると聞いています。

クリーンな取引は当然大切ですが、クリーン過ぎても物事が進みにくいというのがこの社会の事情です。

自民党のパーティー券騒動なんかはそんな「大人の事情」が行き過ぎた例です。

いつだったか、日本の政治がつまらなくなったのは田中角栄のような政治家がいなくなったからだ、という意見を聞いて妙に納得したことがありますが、

クリーンではなくても物事を前に進めるという人物の価値を表した言葉のようにも感じます。

 

先日、プライバシーの仲間と久しぶりに恒例のオンライン飲み会を開催しているときに、

アメリカでトランプ大統領が大統領選に勝利する可能性について話題になりました。

私の周辺の人にはトランプ大統領はありえないという人が多いのですが、報道を見ていると根強い支持を得ているようです。

特に銃規制に反対する人はトランプ大統領を支持しているようです。

友人の一人が言っていましたが、メキシコの移民を遮断した際、彼は子どもと親を引き離すということをしました。

残酷なところがあり、それを平然としてしまう人が頂点に立つことが、政治の世界では歴史上しばしばあります。

ナチスドイツのユダヤ人の強制収容所やポルポト派による子どもの大量虐殺も、常軌を逸した人が政治の中で力を持った例でしょう。

社会に蓄積した不満がそういった人を権力の座に導くのでしょうか。

人の社会というのはわからないものです。

 

オンライン飲み会を行った前後、アメリカのNISTが出した、

GAI (生成AI)の管理を行うために AI RMF(AIリスクマネジメントフレームワーク)とのマッピングを行ったドキュメントを読んでいました。

プライバシーマネジメントや情報セキュリティマネジメントをやってきた人にとっては、既存のフレームワークを少し調整すれば対応できそうです。

ただ、簡単ではありません。

偏差値55程度の学校の入学試験で出てくる応用問題、という雰囲気です。

問題は、これまで「ガバナンス」を面倒で口うるさいもので、やっている感を出していたら良いというスタンスで取り組んできた組織です。

彼らは基本がそもそもできていないので、このガイダンスを見たところで何を書いていて何を目指しているのかが想像できない可能性があります。

読みながら、私は何とも言えない不安に襲われました。

果たしてどれだけの企業が、ただでさえ積みあがっているコンプライアンスコストを積み増して、社会的責任を果たそうとするのでしょうか。

 

コンサルタントという無責任な立場だから、無責任な発言をしていますが、

組織がコンプライアンス活動を行うのは、それが経済活動を行うために合理的な努力と認められるからです。

コンプライアンス活動は目的ではなく、あくまでも手段でしかありません。

コンプライアンス活動を行うことによって機会が生み出されるとしても、そのコストはできるだけ抑え込みたいという風に思うものです。

この傾向は特に、アジアではっきり見て取れます。

 

そういう組織が、過剰な要件を示されると、当面「なかったことにする」というスタンスになってしまうことがあります。

私の不安は、ここに根差しています。

GAIは間違いなく社会に大きな影響を及ぼし得ます。

なのに、そこで生じる問題を十分対処しない企業が、「利活用」に傾倒したとき、私たちの社会はバランスを崩してしまうかもしれません。

ただでも、政治的にバランスが危うい時代です。

GAIの出現が最後の一押しとならないでほしい、というのが、少し飛躍しつつも私が感じる危機感です。

平和が一番です。

自分の子供たちに人殺しをさせたくはありませんし、自分の大切な人が殺される世の中になってはいけません。

 

ガバナンスとは、グレーなゾーンを飲み込みつつバランスを保つための活動です。

組織ごとに解は異なり、組織ごとにアプローチも異なります。

ただ、機能するガバナンスには構造があります。

ガバナンスに関わる仕事は、社会を担う仕事でもあると思っています。

読者の皆さんが良い仕事をしてくださることを心から応援しています。

 

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~オンラインセーフティを考えよう~

今年は7月にとある企業のセキュリティ月間で私のCyberSafetyの仲間と英語、日本語のウェビナーを開くことになっています。
一緒に話す仲間の一人はオーストラリアのNicoleさんで、私の最も信頼しているプライバシーの専門家でもあります。
彼女は昨年のIGF 2023ではMax Schremsとパネルディスカッションをしていました。
Nicoleさんは数多くのオンラインセーフティのウェビナーもこなしてきた人です。
私も長年一ファンとして彼女のウェビナーを聞いてきたので、
今回一緒にウェビナーで話ができるということは本当に光栄なことですし、今からワクワクしています。

ここ2年ほど、プライバシー業界でもオンラインセーフティについて取り上げられることが多くありました。
子どもや年少者のデータの取り扱いについてのガイダンスやグッドプラクティスが様々な国で公表されるとともに、法規制も整備されてきました。
日本法も遅ればせながら、来年予定されている法改正で子どもや年少者の保護について規制が整備される見込みです。

オンラインセーフティというと私たちは子どもや年少者の保護を想像しがちですが、実は、年齢に関係なく重要な課題となっています。
OECDはオンラインウェルビーイングという言葉を用いて大人を含めた、オンライン環境での人間らしいあり方についてアウェアネス向上を目指しています。
犯罪への関与、セキュリティ上の問題、誘拐、デマ、ストーキング被害等、オンラインをきっかけとした被害は年齢を問わず広がっています。
自己責任と冷笑しているには問題が大きすぎる、というのが現実です。

世の中は痛みと共に学習します。
一時世間を騒がせた「迷惑系 YouTuber」と言われる人々は、もはや脚光を浴びなくなりました。
大学生による悪ふざけにも、少しブレーキがかかってきた感があります。
それをもてはやした人々は、もはや自分がそれに加担していたことも忘れてしまっているかもしれません。
悪ふざけで人生を損なわれた人は、泣き寝入りとなってしまった人も多くあるのではないかと想像しています。
でも、そんなことは本来あってはいけないことです。
良識が人を導くというのは、とても難しいいことだと感じます。

いじめの問題を取り上げている人の中には、加害者と被害者の二者だけではなく、
周りにいて何もしなかった第三者も重要な関与者として扱わなければならないという考え方の人もあります。
私はこの考え方に同意しています。
問題が生じているときに、問題を認識しながら無為に過ごすということは、返って問題を加速させることにもなるからです。
問題を認めた場合、そのエスカレーションを防ぐ方法は「関与する」ことです。
大変なことで、勇気のいることです。
しかし、より良いコミュニティを形成するためには、私たちは他者とかかわり続け、社会としての規範を努力して守らなければならないのです。

迷惑系YouTuberや度の過ぎた悪ふざけ、人を食ったような政治家たちが生まれることを許している現代のコミュニティは、断片化したコミュニティといえます。
ただ、その悪影響や無益さを認識した現在は、まっとうなコミュニティ形成のために動くチャンスでもあります。
勇気を持った人が、日本に、世界に増えてくるといいと思います。

▼当社のCyberSafety活動について
https://technica-zen.com/#social_contributions

 

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