2023/10/20★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~情報銀行再考~

11月20日のFoundationトレーニングの実施が決定しました。

今回も対面形式でセガ様のオフィスをお借りしての実施となります。

複数の企業の方を一緒にお迎えしてのトレーニングであること、対面形式での実施だからこそできる雑談がある等、

トレーニング以外のメリットも多い場となるかと思います。

この機会にぜひ参加をご検討ください。

(お問合せはこちら info@technica-zen.com )(お申込みはこちら https://technica-zen.com/foundation-training/ )

 

本日の日本時間15:00から、シンガポール、イギリス、中国のコンサルタントと共にLinkedIn上で越境移転をテーマとした無料セミナーを行います。

私はASEANのMCCs(モデル契約条項)についてご紹介します。

日本や欧米での議論とはやや異なる角度からの議論となるため、個人的には面白い内容ではないかと思っています。

こちらもお時間の都合があえばぜひご参加ください。

(詳細はこちら https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7122090773587640320 )

 

先日参加したIGF2023で私が興味を持ったテーマの一つに情報銀行がありました。

情報銀行は数年前までスマートシティーと並んで政府が力を入れていた取組です。

最近は全く新聞の紙面を飾らなくなりましたし、取組について聞く機会も減っていたのですが、

IGFでは情報銀行をテーマとしたセッションが持たれていました。

AIについていろいろ勉強した後に改めて情報銀行のコンセプトを見ると、考え方はなかなか良いものに思えます。

 

情報銀行の出発点は、消費者のデータを企業がマネタイズしている中で消費者に十分還元がされていないという問題意識です。

改めて振り返ると、政府はデータを電気や水道のようなライフラインの一つとして位置づけたかったのではないかと感じます。

裏を返せば、それほどデータは今日重要な役割を果たしているのです。

情報銀行の取組はまだ継続されています。

認証制度も用意され粛々と進められている印象です。

とはいえ、いまのままではそれほど大きなインパクトを与える取り組みにはならないような気がします。

例えば情報銀行では生データを扱うことになっています。

大量の生データを集積することにはもちろん大きなリスクがありますので、

リスクを嫌う企業や個人は情報銀行を利用することにインセンティブを感じないかもしれません。

PETsを活用して適切な保護を施すことで安全性を高める等の対策でこういった問題は対処できるので、仕組みそのものの改善が期待されます。

この作業が迅速に進むかが一つのカギとなりそうです。

 

もう一つの問題点は、日本という国の中での取り組みでしかないという点です。

取組自体は優れていても、データは国境をまたいで世界中を移動しています。

日本という一領域でのコントロールが消費者にもたらす恩恵は限定的です。

私がそれでも情報銀行に興味を持っているのは、情報銀行のような仕組みがあればAIの学習データのベースとなり得るからです。

AIの学習データの課題の一つは、サニタイズされた信頼できるデータを集めることの困難さにあります。

政府の情報銀行が様々な国で整備されれば、ある程度信頼できる情報が集積する仕組みが生まれる可能性があります。

データの集積が行われるため、個人のコントロール権も行使しやすくなるでしょう。

国際的な枠組みの中でバイアスを除去するための配慮が統一して行われるようになれば、より確度の高いAIシステムの普及につながるのではないかと感じます。

 

日本には良いアイデアが散見されます。

こういったものをいかに実世界に普及させるかというという点に力を入れるとよい気がします。

 

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~ AIは2024年に落ち着くか ~

 

生成AIの登場で、今はデータに関する国際会議にいけばもっぱらの話題はAIのガバナンスとなっています。

AIガバナンスは最終的にはAI監査を行うこととなるため、監査法人が今後主要な役割を担っていくように思います。

先日当社でインターンをしてくれていたマークさんと話をしていると、

アメリカではAI監査を専業としたスタートアップも出てきているといっていました。

ただ、彼によるとAI監査の需要はまだ顕著にあるわけではなく、そういった会社が持続可能かは疑問だとのことです。

世界のルール作りもまだ途上のため、一部のプロアクティブな会社を除いてまだ取り組む会社は少数のようです。

 

国連の取組を見ていると、データの利活用やAIへの対策もSDGsの一つとして挙げられていました。

プライバシーガバナンスやAIガバナンスはSDGs 11 の”Sustainable Cities and Communities”等が該当するということです。

これが企業の対応へのモチベーションとなればと思います。

 

先日LinkedInのニュースフィードを見ていると、2024にAIブームに”cold rain”が訪れるかもしれないというニュースがありました。

今年に入ってから、急速に普及をしたAIですが、その運用費を企業が支えきれないのではないか、という趣旨のニュースでした。

コストをまかなうことのできるビジネスモデルへと変えていくにはもう一段生みの苦しみが必要かもしれません。

ただ、ビジネスとしては少しスピードが緩むかもしれないにしても、AIがもたらし得るリスクは失速しないでしょう。

サイバーセキュリティにおける攻撃と同様、悪意のある利用を行う人々は目的をもって攻撃を行うため、彼らにはモチベーションがあります。

そういった状況を抑制するためには、やはりサービスを提供する、もしくはサービスを二次利用する企業が対策をとる必要があります。

 

対策の一つとして挙げられているものにはコンテンツモデレーションといわれるものがあります。

これは、AIのアウトプットを人の手で調整することです。

ただ、この報道があったワシントンポストの記事( https://www.washingtonpost.com/technology/2023/10/13/ai-voice-cloning-deepfakes/ )によると、

「ソーシャルメディア企業も、人間のファクトチェッカーがフェイクを見抜くのが難しいことが多いため、AIが生成した音声をモデレートするのは難しい。

一方、不正使用を防止するガードレールを備えているソフトウェア企業はほとんどない。」

ということです。

 

私たちは本当に難しい時代を生きていると思います。

多くの人が、この問題に取り組もうとしています。

ただ、そのスピードは遅々として、技術の発展に追随できていません。

このような状況ではできることから始めないといけないことも確かです。

子どもたちの世代により良い未来を残すために、現役世代の私たちが頑張る時なのだと思います。

 

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~ データ利活用の「思いやり」と「配慮」 ~

 

最初にお知らせです。

10月27日(金)にLinkedIn上で欧州のSCCsとASEANのMCCsの比較をテーマとしたウェビナーにパネリストとして参加します。

最近は海外から声をかけていただく機会が増えていてとてもうれしく思っています。

またウェブサイト等で周知しますので、お時間が合う方はご視聴ください。

 

この原稿は、新聞でも取り上げられていた国連のインターネットガバナンスフォーラム(IGF2023)の会場で書いています。

IGFは国連の会議だけあってSDGsを軸とした議論が行われており、他の会議よりもインクルーシブ(inclusive)であることに重きが置かれている気がします。

参加者も、いわゆる「途上国」と呼ばれる国からの方が他の会議と比べてはるかに多くいます。

 

インクルーシブという言葉は日本語にしにくい言葉ですが、私は「思いやり」や「配慮」という言葉が近いのではないかと思います。

国連は、先進国の理論を取り上げるだけではなく、途上国を含めた世界全体の前進を意図しているのでしょう。

議論の複雑さは増すものの、とてもよいアプローチに感じます。

 

先進国が優れていて途上国が劣っているという見方はもちろん誤りです。

どんな国にでも優れた専門家やリーダーがいます。

IGFでも国境を越えたデータ移転を飛行機に乗ることに例えて説明していた優れた専門家がアフリカにいました。

構造的な課題が優れた専門家の活躍や途上国の発達を阻害するケースが多くみられるため、

国連はその障害をいかに取り除き、活躍すべき人や国が活躍できる環境を整えようとしているのです。

 

ところで、最近の日本は「思いやり」や「配慮」について感度が低くなっているように感じないでしょうか。

特にデータ利活用については、「利活用を推進する」という産業界と政府の号令の下、

データに付随する「人の権利」(人権)への配慮を欠いた取組が散見されるようになりました。

リクナビの内定辞退率の件もそうでしたし、最近報道された埼玉県の鷺宮中学校が行っている生徒のリアルタイムモニタリングの取組もそうです。

(後者の取組はLinkedInで紹介したところ、とても大きな反響を専門家の間でうみました。予想した通り、肯定的な意見は見られませんでした。)

データの先に「人」の顔が見えていない取組が公然と行われ実施している人がその問題に気が付いていないのみならず、

政府が法律の執行を控えることでデータ利活用の後押しを続けているという状況は心配になります。

そんな日本が国際社会でAI倫理について「人間中心のAI」(Human-centric AI)を率先して提唱してきたというのは、皮肉なことです。

 

先日、私の子どもが参加しているバスケットボールの市内大会で、あるチームが100点以上の大差をつけて相手チームを負かしたという出来事がありました。

小学生のチームの大会では高学年の選手がいるかいないかでまったく結果が変わってしまいます。

100点以上の点差をつける勝ち方はしないという暗黙のルールがあったのですが、

そのチームの指導者は「勝つこと」に重きをおいて一方的に得点を取り続けてしまったようです。

これもまた、「思いやり」や「配慮」にかけた行動です。

勝ったチームは、結果的に非難にさらされることとなりましたし、負けたチームの選手はバスケットボールへの興味を失ったかもしれません。

「勝つことが一番大切だというチームが最近増えてきて、問題になっている」と子どものバスケットチームのコーチは言っていました。

それを聞いた時、日本の今の雰囲気がここにも表れているのかもしれないと感じました。

 

「思いやり」や「配慮」にかけていることは、だれも幸せにしません。

ビジネスの現場におけるデータ利活用についても、これは同じです。

コンプライアンスやリスク評価は、「負の側面を強調する」ためのものではありません。

コミュニティが、社会が、バランスを保つために必要な「思いやり」や「配慮」を確認するための活動だということを再認識したいものです。

 

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~AIの講義、中国の越境移転の新動向、国内の状況~

 

9月28日木曜日にISACAとIAPPのknowledgeNetシンガポール、バンコクが共同開催したウェビナーでお話しさせていただく機会をいただきました。

今回いただいたお題は”Privacy Issues around Generative AI”でした。

当初3名のスピーカーがいる予定が急遽私一人となってしまったため、90分間話をすることとなりました。

せっかくの機会なので、生成AIに関するリスクに限定せず、AIガバナンス全般について、どのようなリスクを想定し、AI倫理をどのように実装するのか、

アルゴリズムのリスクアセスメントやバイアスのテストをどのように行うのか、といったことをお伝えしました。

もちろん、ここでお話しした内容は「定式化」されているものではなく、現在進行形でディスカッションが行われているものです。

私は幸い、その議論の中心に関わることができていることもあり、比較的精度の高い情報をご提供できたのではないかと思っています。

80人を超す参加者が90分間離脱することなく聞いてくれ、講義の後には数名から非常に好意的なフィードバックをいただけました。

私としても、2023年1月から学んできたことをアウトプットするいい機会となり、非常に充実した時間を過ごすことができたと思っています。

 

AIに関しては、10月8日から京都でIGF2023が開催され、国連での最新の議論が日本で聞ける貴重な機会となっています。

興味のある方は、ぜひ足をお運びください。

 

話は変わって、同じ9月28日に、中国から非常に大切なニュースが届きました。

越境移転の安全性評価、標準契約、認証の要否について、どのようなケースで必要となり、

どのようなケースで不要であるかを明確にするガイドラインの草案が出されたのです。(当社の会員サイトでも全訳を紹介しています。)

現地法人がある企業や越境ECを営む企業にとっては良いニュースとなったことでしょう。

データローカライゼーションや政府によるデータへのアクセスと、負のイメージが強かった中国ですが、

ビジネスの利便性について合理的な判断を優先した印象があります。

 

標準契約に関しては、人事データを除き、年間1万人以上100万人未満の個人情報を越境移転する場合に必要となり、

且つ当局への提出が必要であるという点は変わりません。

該当する場合は引き続き対応する必要があるので注意してください。

 

ところで、越境移転に関しては国内でも少し議論が活発になってきています。

国内の弁護士の方々が個人情報保護への関心を高めていることが一因のようです。

最近私が教えていただいた話では、個人情報保護法の外部委託との関連で、

クラウドサービスの利用について外部提供となるかどうかについて再度議論が行われているということです。

個人情報保護法が明確に記載していないところが従来とは異なる解釈の余地を生んでいるようです。

ただ、テキストの解釈をめぐる議論という雰囲気も色濃く、私のような実務寄りの人間は、

何を護ろうとしているのかがぶれている、或いは希薄なような印象を受けました。

欧州のような、「個人データ保護 = 人権の保護」が人々の願いとして生じた地域で行われる議論と、

制度としての個人情報保護という文脈が強い国とでは、議論のされ方が異なります。

AIもそうですが、法規制への対応を行う際には、議論される国や地域の文化が大きな影響を及ぼしていることがしばしばあります。

実務家は、法律事務所の行う法律の解釈に加え、大局を理解しながら適切な選択肢を見つける必要があります。

また、法律に加えてそういった文面に現れないオペレーションの部分についても理解を深めておきたいものです。

 

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