テクニカ・ゼン株式会社では会員制データ・プライバシー情報サイトを開始しました。こちらの有用情報で記事を更新していますので、ぜひ、ご訪問・ご登録ください。
JETROさんとのアドバイザー契約がひと段落したので、今日はこの仕事を通じて感じたことを書いておきたいと思います。
JETROさんの仕事では多くの中小企業の方とお会いする機会をいただきました。2018年はGDPRが施行された年でもあり、振り返ると40社を超える企業様に直接アドバイスをご提供していました。セミナーに来ていただいた企業を入れるとこの数倍になるでしょう。それだけ多くの中小企業が海外展開をしているということを知り、改めてビジネスがグローバル化していることを感じます。
一方で、データ・プライバシーの仕事を通じ、日本の企業のビジネスに対する認識が世界で議論されていることがらからずれ始めている(あるいはずっとずれている)のではないか、という印象も受けました。
私は外資系の会社での仕事が多かったためか、以前から同様のことを感じていたのですが、今回あらためて数多くの企業と接することで、この印象が強まったという感覚です。
データ・プライバシーの本質は、個人データ処理を行う企業が「社会的責任」として正しいデータ処理を行うことを推進するものです。デジタル化する世界において、企業が社会に及ぼす影響が無視できないものとなったことが背景にあります。
外国の専門家と話をすると、その議論はいつも「倫理」に行き着きます。わたしたちプライバシーの専門家は、どのように社会的責任を果たせば良いのかを議論しています。
ところが、データ・プライバシーや法令、コンプライアンス関連のコンサルティングをしていると、大企業も中小企業もこの点の理解が非常に弱いことを感じます。「大企業は対応をしっかりしなければいけないから損だ」という意見がある等、「怒られるからやっている」という会社が相当数あるように見受けられます。中小企業ならまだ理解できないことはありませんが、大企業で「経済的価値が生まれないところには予算がつかない」という話を聞くと少し心配になります。
何故取り組んでいるのか、についての問いかけが組織に欠けているのでしょう。
これは、実は根深い問題です。会社が単なる金儲け機械になってしまっているからです。戦後復興の時代はそれでよかったのでしょうが、ある程度の経済再生を果たした後では次のステージに移らなければ発展は望めません。
金儲けだけのためにがんばることができる人はごく一部です。金儲けのためのツールになってしまった人は当然生産性も落ちますし、幸福度も落ちるでしょう。当然商品サービスにそれが現れます。働く人にはモチベーションが必要です。
日本企業のこういった姿勢は、日本が30年間一切経済成長を止めてしまったという形で、わたしたちの生活にも影響を及ぼしています。企業とは、社会的な存在であることを改めて認識しなければなりません。
「なぜ存在するのか」
「なぜ仕事をするのか」
「その先にある未来は何か」
「何を達成したいのか」
今、日本の企業にはこういった問いかけが必要なのではないでしょうか?日本の企業のトップは、金儲けを目的とするのではなく、企業としての仕事を果たすための取り組みを行う必要があるように感じます。
ある地方でセミナーを開いた後、「日本では「倫理」というと青臭いと思われませんか?」と聞かれたことがあります。
私は、そうではないと思います。
企業にとっての「倫理」とは企業の「あるべき姿」です。「企業理念」と置き換えても良いでしょう。「企業理念」はすべての企業が持っています。企業活動はすべて、「企業理念」の実現のためにあるはずです。「倫理」の真剣な議論は、むしろ当然するべきことなのです。
自分たちがどうあるべきかを議論してはじめて、わたしたちは自分たちの行為に誇りを持つことができます。誇りを持てる仕事は幸福な仕事です。