2023/9/6★寺川貴也が注目する最新NEWS TOPIC★

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~両親の電子メール~

 

9月になっても暑い日が続いています。

最近は熱中症指数が公表されており、この指数が高いと子どもたちは体育の授業ができないそうです。

私たち人類の経済活動が気候変動に寄与していることは昔から指摘されていました。

私が大学生だった20年以上前、石油をバイオフューエルに置き換えようと活動しているNPOがいました。

菜種油で車を走らせることができると聞いて、驚いたことを覚えています。

その団体の主張では、環境負荷も低く、循環型社会に寄与するものだということでした。

しかし、あの頃は石油が80円と安価だったこともあり、結局顧みられることはありませんでした。

ここ数年、新聞やメディアでとみに気候変動対策についての情報が増えてきました。

クライメイトテックという言葉も生まれ、ファンドからの資金を集めているようです。

これが20年前であったら、子どもたちが体育の授業ができない日が来なかったかもしれません。

社会の問題は、いつも同じ光景を繰り返します。

 

話は変わります。

私たちの会社には20歳のインターンも来てくれますが、70代の方も現役で仕事を手伝ってくれています。

その方から先日頼まれて、ネットの設定を手伝いました。

その時に届いている迷惑メールを目にしてショックを受けました。

すべてがフィッシングメールなのです。

ウィルスソフトが機能して自動振り分けされているものの、

手を変え品を変え、銀行口座情報やクレジットカード情報を入力させようとしています。

私のところにも似たようなメールは来ますが、数が数倍違いました。

アルゴリズムの世界では「高齢 = だましやすい、判断力が弱い」というラベル付けがされていることがあるという報告を見たことがあります。

その結果を見せつけられた思いです。

アルゴリズムは淡々と、ラベルに従ってフィッシングメールを送り続けるのです。

このメルマガを読んでくださっている方のご両親もおそらく「高齢」と分類される方がいらっしゃると思います。

いちど声掛けをされてみてください。

毎日膨大なフィッシングメールを送り続けられたら、高齢でなくても、クリックする確率は高まります。

「オレオレ詐欺」のニュースや注意喚起が増えていても、この仕組み自体を止めなければ抜本的な解決には至らないでしょう。

 

これも私が20代のころの話で20年以上前の話です。

当時「ダイレクトマーケティング」という言葉がインターネットに登場しました。

読み手の感情を動かし、購買の最後の後押しをするためのマーケティングメソッドです。

「秒速で〇〇」といったわかりやすいコピーライトを用い、ターゲットに巧みに商品を購入させます。

今思うとユーチューバーの走りのようなところもあって、

人が思わず目を向けるようなきっかけを作って自分たちの利益を最大化することを繰り返し行うというものでした。

私は興味をもちつつ一歩踏み込めないまま、あるダイレクトマーケティングを使いこなしている人に「これって人をだましているように感じませんか?」と尋ねました。

答えは「それは彼らの問題で、結果的に幸せになるのであればよいのではないか」というものでした。

ビジネスをしている人は何らかの「信念」をもっています。

「結果的に幸せになる」と思っているからサービスを提供しているのです。

「幸せ」かどうかは「彼ら」、つまり相手の問題で、それはサービスを提供する側の問題ではないというロジックです。

ロジック上は一見正しそうに見えます。

ただ、「そんな身勝手な」という気持ちもわいてきました。

 

西村あさひ法律事務所の福岡真之介さんの著書に「AI・データ倫理の教科書」という本があります。

この本の中で、福岡さんは功利主義ではなく、人として何が正しいかを問う「徳倫理学」が重要なのではないかと指摘していました。

「徳」とは、「道徳」です。

福岡さんは著書の中で、いろいろ考えた結果「道徳」に行きついたことに自分でも驚いたと書かれていました。

私も仕事を通じて「道徳」に行きつくことが多く、同じ思いをしています。

私たちの社会は一つの価値の軸(例えば、経済合理性、事業や国家の繁栄)だけで突き進むことが不都合を生むようなところがあるようです。

特に、経済合理性は総合的な豊かさをもたらしつつも環境破壊や異常気象、脆弱な人々の排除という負の側面もはらんできました。

そんな非難をするのはおかしい、という人には、自分の両親に来るフィッシングメールの数々や、今の「異常気象」について再検討してもらったほうが良い気がします。

大切な人、愛する人が危険にさらされることを良しとする人は少ないのではないでしょうか。

これらは現実になってしまった「リスク」の一例でしかありません。

データが社会と密接にかかわる形で利用されるようになるなか、

これまでの蹉跌を顧みることなくリスクが発現するはずがないと突き進むのは、あまり褒められたものではありません。

私たちのしているプライバシーやAIについてのリスクアセスメントは、こういったリスクの発現をできるだけとどめるための努力という側面もあります。

 

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