私は法令・規格のコンサルティングをしていますが、その中にはマネジメント・システムの構築支援も含まれています。マネジメント・システムは一般に日本企業が非常に苦手なもののように感じられます。マネジメント・システムが苦手な企業は、部署間のコミュニケーションが社外の人とのやり取りのように遠慮がちになっていたり、公式文書を多用していたりし、組織が硬直化しています。また、「みんなで」がんばろうということもよくあります。
マネジメント・システムというのはむつかしいものではなく、ただ、組織の目標を達成するための最短距離は何かを考えた結果の合理的な帰結を定式化するだけなのですが、硬直化してしまった組織では会社全体のバランスを再構築するということができず、多くの場合は空中分解します。
塩野七海氏の「ローマ人の物語」では、トライアヌス帝の戦いとマルクス・アントニウス帝の戦いを対比して、「戦略」があった戦いと「戦術」しかなかった戦いと批評していました。戦略とは、戦後処理を含め事前に綿密に計画された戦闘であり、戦術とは場当たり的な問題への対処、局地戦の繰り返しだといいます。戦略には方向性と確信があり、戦術は当の本人もどこに向かっているのかがわからない状態となります。
マネジメント・システムは戦略に該当し、日常の問題に対応することは戦術に該当します。今すぐにやらなければならないことは〇〇だから、この問題に専念すれば次の道が開けるに違いない、という仕事の仕方をしているなら、それは戦略のない仕事の進め方になっていることを疑ったほうがいいでしょう。
経験上、戦術で仕事をすると、仕事が増え、効率が落ちます。戦略で仕事をすると、仕事は細かく分業化され、効率の向上がもたらされます。
データ・プライバシーはプライバシー・マネジメント・プログラムを構築することが一つのマイルストーンです。それほど難しいことを求められるのではないのですが、戦略を使いこなしてこなかった組織では導入に踏み切れないむつかしさがあるようです。