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<AIポリシーの動向>
ノーベル賞作家のカズオイシグロさんの最新作「クララとお日さま」はAIをテーマとした小説です。私もまだ読み始めたところですが、AF(Artificial Friend)とよばれる人工知能を搭載したロボットと人間の友情を描いた物語だといいます。カズオイシグロさんは、この小説を書くにあたって、Google等の先進企業のAI開発者にインタビューを繰り返したそうです。作家の方は、作品に命を込めるために取材を徹底しますね。
著名な作家もAIをテーマにすることからも推測できるように、このところAIに関するニュースが増えています。
▼先週金曜日(11月4日)には欧州のAI法のテキストが欧州評議会で可決され、次の審議に進む予定だというニュースが流れてきました。
▼翌土曜日(11月5日)には、前回のメルマガでも少し触れた顔認識技術についての勧告(Resolution on Principles and Expectations for the Appropriate Use of Personal Information in Facial Recognition Technology)のテキストが正式に公表されました。
▼10月31日にはシンガポール政府が当面AIを犯罪事件の裁判で量刑を決めることに使う予定がないというニュースが流れています。
▼10月28日には欧州委員会がAI版PL法となるAI責任指令を提案しています。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_5807
AIは今最もホットな話題の一つです。
実は、日本はAI倫理の分野では世界で最も早く取り組みを始めた国の一つです。世界標準となっているOECDのAI原則やG20のAI原則は日本のAI研究開発ガイドラインの影響を受けています。まだ原則の整備に取り組む国が多い中、日本はすでにAI戦略を2019年から毎年定め、AIポリシーの実装(implementation)段階に遷移しています。
この事実は世界的にAIの導入が遅れているという日本の現状とギャップを感じさせます。政府の意図と実態との乖離が生じている理由はどこにあるのでしょうか。
個人情報保護委員会は現在、「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会」というものを定期的に開催し、カメラ画像の利活用についてのガイドラインを作ろうとしています。有識者たちがガイドラインについて非常に精度の高い議論をしているのですが、有識者検討会の議事録のある部分に先ほどの触れた「乖離」の理由を見た気がしました。
<引用>
「こういった掲示や通知公表の事項を実際に具体例として示すと、掲示の案などを忠実にコピーすることが適切な表示を実施していると考える事業者が多い。典型例はJISQ15001の個人情報保護指針。例えばいわゆる個人情報・プライバシー保護を専門と標榜する方が、例えば顔認識と書いたら、それは識別ではないかと、本当に細かく高度な用語の使い分けについても指摘をすることが頻繁にある。そうすると事業者側としては、具体
的に工夫をして何か文言を検討しようにも、工夫した途端、非難の対象になるという、非常に苦慮せざるを得ない対応が多々あった。今回の対応としては、忠実にコピーしていただくようなすばらしい掲示案を、今回の案として提示いただくというのが1つかと思う」
赤裸々な意見で思わず笑ってしまったのですが、日本のコンプライアンスの現状認識としてはわりと一般的なものかもしれません。形式的にコピーしたらよいものを政府が「与え」、遵守する側がコピーするという関係からは、創造的な関係はなかなか期待できそうにはありません。
ちなみに「いわゆる個人情報・プライバシー保護を専門と標榜する方」と言われている人がどういう方かはわかりませんが(私でないことを祈っています(苦笑))、こういわれないためにも「IAPPのトレーニングでグローバル標準のプライバシー保護を学びましょう」と便乗して宣伝すると、プライバシーの専門家の風上にもおけないとお叱りを受けるでしょうか。
当社が提供しているIAPPのトレーニングは11月から諸外国の価格に合わせて価格改定しましたが、その一方でCIPTトレーニングやFoundation Training(2023年1月よりご案内予定)、認証試験対策コース「Exam preparation」(今月内にご案内予定)も増えています。ぜひ受講をご検討ください。
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